プロゴルファー育成費用、親の出費は年間いくら? マイナス収支でも家族の絆を結び付けた“1枚の落書き” <RS of the Year 2023>
お金持ちじゃなくてもゴルフはできる、その先駆者になりたい
ゴルフを始めて7年、親の決意を決めさせた落書きから6年。家族ぐるみの努力により、今はスポンサーもついた。マイナスは続くが、スポンサー収入、財団からの領収証決済などもあり、月の家計からの持ち出しは20万ちょっとに抑えられている。 営業自体も決して得意とは言えなかった父親は、連日子どもの成長をフェイスブックでアップし、決して動画の編集技術が高いわけでもなかったがインスタグラムの動画を投稿。認知獲得と活動資金獲得に励んでいる。それらの活動すべては、子どもの応援者を増やすためだ。 「これだけお金をかけても、本当はもっとかけたい。もっと裕福なご家庭はたくさんあるし、海外だったら桁違い。でも、元々お金持ちじゃなくてもゴルフはできるっていう、先駆者にはなりたい。クラウドファンディングをした当初は、『アマチュアとしてそれはダメだよ』みたいな指摘もあった。でも、海外で事例があって結果的にOKだったし、その後何人かジュニア選手たちが後に続くようになった。物品のサポートも自分たちの活動をこうアピールしたらできるかもしれないよっていうのは、伝えていきたいと思っています」 父親は、子どもが決して天才的なゴルフの才能を持っているとは思わない、と言う。むしろ期待をかけているのは、その人間性だ。 「誠ノ介は努力も重ねているけど、天才的なゴルファーなんてもっといる。でも、ラウンドする時に知らない大人と一緒になって、最終ホールには仲良く手をつないで歩いたり、競技を通じた18ホールでのコミュニケーション力は俺にはない。この子の持って生まれた才能だと信じています。彼の気持ちに夢を見させてもらっているから、投資した額が返ってくるとも思っていない。彼が納得できるところまで、行けるだけ行きたいと思います」 ここまで散々お金の話を書いてきて、今更だが、お金の話など関係なく、筆者はうらやましく思った。成績や才能の話じゃない。親と子、夫と妻で、しっかりと目標を共有し、同じ方向を見て対話を重ねていることに。つらい時も苦しい時も、お互いを信じ合える家族であることに。 海外4大メジャー制覇を掲げる誠ノ介君に、どんなゴルファーになりたいか聞いた。一番に帰ってきたこの答えを聞くと、自然と彼を応援したくなる。 「子どもに喜んでもらえるゴルファーになりたい」 夢を叶えるのに、お金は不可欠だ。しかし、もし誠ノ介君が成功して目標を達成したなら、それはお金の力ではないと思う。家族の愛の力だと、筆者はいつか世界に伝えたい。 <了>
文=守本和宏