プロゴルファー育成費用、親の出費は年間いくら? マイナス収支でも家族の絆を結び付けた“1枚の落書き” <RS of the Year 2023>
月3万円程度の初動と、親に決意を決めさせた一枚の落書き
当然、最初からそんなに費用がかかったわけではない。「自宅は愛知ですが、本格的に始めてからは、安い練習場を探して岐阜に行ったり、かかるのは月3万円程度でした」 誠ノ介君がゴルフを始めたのは3歳の時。父親がもらってきた東海クラシックの観戦チケットで大会を観戦。すると、それまで大好きだった『きかんしゃトーマス』のおもちゃに見向きもしなくなり、プラスチック製のゴルフクラブを振り始めた。 徐々にゴルフ番組でルールなどを覚えると、たまにゴルフへ出かける父親に対し「パパだけ行ってずるい」など、次第にラウンドに興味を持ち始めていく。クラブもいきなり全ては買い与えず、最初はパター、次はウエッジなど、1本ずつ手配するような調子だった。 4歳になり、「試合に出たい」と言った誠ノ介君は、8歳以下の大会に出場。ハーフを3オーバーの39で周り優勝する。この成績に周囲がざわつくが、本人が使っていたのは、ジュニア用の1.5万前後の6本セットのクラブ。周囲は10万~20万くらいの10~14本セットのクラブなど使用するなか、その成績は親にも期待を抱かせた。 しかし、当時から生活の厳しさは感じていた。出身の兵庫県から愛知県に移り、親戚の縁で人材派遣会社の代表を務めていた誠之さんだが、収入は一般的なサラリーマンと同じぐらい。普通に家族で暮らすには問題ないが、潤沢に資金があったわけではない。「そのころの出費は月3~5万ぐらい。それでも普通に子どもの習い事としては高いし、徐々に練習や試合にお金も時間もかかりだして、両立がどんどん厳しくなっていきました」。 そんな状態が続いた、誠ノ介君が4歳の時。両親の決心を決める出来事が起きる。それは、とあるゴルフ観戦に連れて行って帰ってきた日、まだひらがなが書けるかどうかの誠ノ介君が、ノートの裏側に自分で書いた落書きだった。 「書けとも言わないのに、自分で将来の目標を書いていたんです。解読したら、『プロゴルファーになったら、子どもにボールやグローブをあげる』って書いてあった。たった4歳の子がね。それを見た時“やらなあかんな”って思った。ゴルフが好きなだけじゃなく、応援してくれる人を思える選手ってすごいねって、妻と話し合った。そういう人間性があれば、彼が仮にゴルフをやめても、大事なことはわかってくれるはず。だから妻と『上限なしで振り切るところまでいくで』って話になったんです」。 誠ノ介君のその行動は、親の気持ちを決めるのに、十分な説得力を持つものだったのだ。