プロゴルファー育成費用、親の出費は年間いくら? マイナス収支でも家族の絆を結び付けた“1枚の落書き” <RS of the Year 2023>
すぐに越える月10万円。しかし一度も、家族でゴルフを諦めたことはない
決心を決めて以降は、どれだけ生活が厳しかろうが、一心に子どもの夢と、ゴルフ優先の生活に変わっていく。 「ハーフでもそれなりにお金はかかる。だから、中部地方のジュニアのお父さんやお母さんに教えてもらったり、ネットで調べたりして、岐阜県の3000円でプレーできるようなところを探して行ったりしました。でも、高速を使えば、往復プラス3000円。ご飯代もかかる。土日に行ったら2万円、4週間で考えたら月8万。平日練習で毎日1000円の打ち放題を使っても、10万近くなる。その頃は毎月赤字で、すごくきつかったです」 借金もカードを使ったり、家庭内でなんとか費用を捻出する日々が続く。ただ、親の努力に応えるように、誠ノ介君の成績も上がっていった。 2018年には、5歳で日本代表となり、世界大会に初出場。コロナ禍を経て2021年には、3度目の世界大会挑戦で、初めて世界一を勝ち獲り優勝を飾った。以降も世界挑戦は毎年続けている。親の連日のSNS投稿のかいもあって、取材やテレビ出演に加え、著名人との動画撮影・ラウンドにも呼ばれ、応援者を増やし続けている。そのおかげで、世界挑戦の資金集めを目的としたクラウドファンディングは、毎回80万程度を目標に設定し、成功している。 しかし、もちろん良い時ばかりではない。自身も“暴走した”と誠之さんは話す。 「この7年間、ずっと良かったわけじゃない。一時期、周囲からの期待に応えたいと成績や結果にこだわり、子どもと喧嘩して雰囲気の悪い時があった。すると、妻から『どうしてこんなに必死でやりくりしているのに、そんなことで喧嘩して、何を中途半端な話してんの』と怒られた。そこで、自分も大反省しました。落書きを見た時『それがエゴになって、親がやらせたいからやらせるのは絶対やめよう』と妻と決めたのに、そうなって反省しました」 ただ、目標が明確な分、本当にゴルフを諦めようとしたことは、家族全員で一度もない。 「お金の使い方含めて無謀な行動はあるけど、妻は一切否定しないし、本音でゴルフをやめてくれと言うことはなかった。いくらかかるか聞いて、どうやって捻出しようか、家族みんなで解決策を考える。『もう出せない』みたいなことは一度もないから、妻には一番感謝しています。俺が自分のゴルフクラブ買うって言ったら『はぁ?』ってなるけど(笑)」 その結束力の強さは、サポートしてもらう選手にとって一番大切なものと言えるだろう。