AIによる業務変革や日本の事業拡大を推進する--ワークデイのエッシェンバックCEO
--エンタープライズソフトウェアのベンダー各社がSaaS化やAI機能の実装などを推進しています。Workdayは、クラウドネイティブなSaaSベンダーという点で競合とは異なりますが、差別化をどう図っていきますか。 繰り返しになりますが、Workdayプラットフォームには7000万以上のユーザーがおり、8000億件以上のトランザクションを処理しています。全て同じアーキテクチャー、同じコードベースで、全てがクラウドであり、最もクリーンなデータセットがあります。どのような競合とも異なり、オンプレミスからクラウドへ移行する必要もありません。ユーザーは最初からクラウドを利用できるのです。 特に、AIは結果こそが重要です。AIの精度は、学習に使用するデータの質に依存しますが、Workdayには人事と財務に関する世界最大規模のクリーンなデータセットがあります。加えて、われわれはデータにまつわるコンテキストを把握し、ビジネスプロセスを深く理解しています。そうしたことをAIに取り入れています。ここが差別化になります。 --生成AIでは、ユーザーがWorkday Illuminateのようなベンダー提供の機能などを利用する形がある一方で、ユーザーが自身で大規模言語モデル(LLM)やシステム、アプリケーションなどを開発する形も出てきています。このような動きをどう見ていますか。 まずWorkdayにおいてユーザーは、Workdayが提供するものや異なる複数のLLMを利用することができます。とてもオープンなのです。その上で私は、学習に使うデータの量ではなくデータセットがクリーンであることが生成AIの開発において重要だと考えています。Workdayのデータセットが非常にクリーンであり、厳密に管理していることは、先にお話した通りです。ユーザーはWorkdayを信用され、最も機密性の高い極めて安全なデータをWorkdayに託されているのです。 さらに、現在の企業においてAIに関する一番の課題は、AIへの投資から得られる価値を定量化できるかどうかです。多くの企業がさまざまなAIを使用していますが、その定量化と正当化、つまりビジネスにおけるROI(投資対効果)を示すことに苦労しています。 この課題に対してWorkdayは、AIを活用することで得られるROIを具体的な証拠として提示することができます。例えば、人材採用であれば、AIを活用して採用担当者の生産性を20~25%向上でき、新規採用に要する時間を20~25%短縮できます。われわれのAIで直接的なROIが得られます。 --8月にSalesforceとの新たな協業を発表し、イベントでは双方のAIエージェント機能が連携するデモを披露しました。今後どのような協業を考えていますか。 Salesforceとの協業は、両社にとってエキサイティングなものです。私は、企業のSystem of Record(SoR)において3つが重要だと考えています。それは、財務に関する記録、従業員に関する記録、顧客に関する記録です。この3つにおいてWorkdayとSalesforceは、他社よりも多く、より優れた、よりクリーンなデータを持っています。 われわれの目的は、業務フローをより良いものにすることにあります。つまり、従業員がWorkday、Salesforce、Slackなど、どのようなシステムを使用しているのかに関係なく、さまざまに質問をすることができ、作業フローの中で回答を提供できるようにしています。システムを行き来する必要がなくなります。これは、他社と協力し、AIを活用してエージェントが業務を支援する一例です。 また、MicrosoftやZoomとも密に連携しています。WorkdayとしてのAIのマーケットプレースも立ち上げており、ここには10社以上のパートナーが参加しています。