「ホームスクーリングでもちゃんと大人になれた」東大研究員が語る少年時代
文部科学省の定義では、学校を年間30日以上休んだ場合、おおむね「不登校」と判断される。しかし、あえて学校に行かずに家で学ぶスタイルは「ホームスクール」と呼ばれ、日本でも取り入れる人たちがいる。学校へ行く人が大半を占める中、学校に行かないで過ごした子供はどのような大人になるのだろう。素朴な疑問に、中学・高校をホームスクーリングで過ごした東京大学大学院の工藤尚悟助教(33)が答えてくれた。
「同位角って覚えて何になる?」ささいな疑問から不登校に
東京大学の柏キャンパス(千葉県)に工藤さんが勤める研究室がある。工藤さんは大学院で、縮小・高齢化する農山村での持続可能な社会のあり方を研究している。出身地である秋田県で、現地調査や高校生向けの教育プログラムなどを行なっており、千葉と秋田を往復する日々を過ごしている。 ホームスクーリングについて聞きたい、と切り出すと、「ホームスクーリングっていう単語は僕が子供の頃は知られてなかったので、自分の中では、積極的な不登校、と捉えていた」と話す。工藤さんに子供の頃を振り返ってもらった。 ━━いつ頃から学校に行かなくなったのか 小学校までは普通に通っていたんですが、中1の2学期から行くのをやめました。 ━━何がきっかけだったか きっかけになったのは数学の授業でした。あるとき、線を2本書いて、そこに斜めに線をひくと、こことここが同位角になって、同じ角度ですと言われたんです。そのときに、「何でこれをやるんだろう」「それで?」って思ったんですよ。その答えが出るまでは、勉強すること自体が止まってしまいました。他の授業、例えば国語や理科でも、何でこれをやってるんだろうって思うんですよね。 学校の学習ってパターン化されているわけじゃないですか。教科書はこれ、1年生のときはここまでというのが各科目ごとにある。それを塗り絵みたいに左から右に塗っていくと中学校はおしまい。そういう感じに疑問を持ったんだと思います。 ━━「何のために勉強するのか」って子供なら一度は思うことだが、周りの大人に「将来のためだよ」とか言われて納得していく。親や先生から言われなかったか もちろん言われましたが、僕自身の疑問は役立つかどうかっていうことよりも、何でやっているのかわからないのにやっているのが気持ち悪かったんです。先生にも色々聞くんですけど、あんまり納得する答えが返って来なくて。 最終的には、何で生きているんだろうというところまでいって。そこから学校に行きづらくなって、体調が登校する時間になると悪くなったりしだしたので、1学期の後半からだんだん行かなくなりました。全く行かなかったのは、2年生の後半ぐらいまで。丸1年くらいですね。2年生の後半から校長室登校をしたので、結果的には登校を再開しました。 ━━家でどうやって勉強したか 最初は勉強が全然手につかないので、ひたすら本を読んでたんです。母は読書が好きな人で、年間100冊以上小説を読んでいたので、家にある小説とか、ノンフィクションとか。学校に全く行っていないほぼ1年間そうやって過ごしました。