「ホームスクーリングでもちゃんと大人になれた」東大研究員が語る少年時代
━━そこからどう過ごしたのか 高校を辞めたら働かないといけないと思って、ホームセンターでアルバイトを始めたんです。今考えるとすごくいい経験でした。お金を稼ぐ意味を考えたり、全然違う世代と関わったりできました。その中で、海外に留学したいと思い始めました。ホームスクーリングのとき、昼間に本屋に行くと、なんでこんな若い子がこんな時間に、という目でみられたりしていたのが嫌だったので、どこか遠い、違うところに行きたいという思いを持ち始めた時期でした。それで区切りをつけるためにも、アルバイトをしながら自分で勉強して、17歳のときに大検を受けるんですね。17歳になったばっかりでしたが合格して、それで自分の中で高校は終わりって思って、留学準備を始めて、19歳のときにニュージーランドに留学しました。 10ヶ月ぐらい、ニュージーランドの語学学校に通ったのですが、いろんな年代や国の人が集まっているので、何が普通、とか考える必要がないんです。自分の話をしても違和感がなく、特別扱いされないというのがあって、それがすごく居心地が良かったです。ずっとこういう環境にいたいなと思って、ニュージーランドの大学に進学したいと思ったんですが、学費が高すぎて行けなかったので、やむを得ず一時帰国しました。それが20歳になった頃で、親に「現地で観光ガイドになりたいから、観光系の専門学校に行きたい」という話をしたら、思いがけず大反対を受けました。
「大学には学問の風が吹いている」母の言葉で大学進学を決意
━━なぜ反対されたのですか 母が大学には行ってほしいと。勉強が嫌いじゃないことも親はわかっていたので「大学という場所が合うと思う」と言われました。ホームスクーリングでやっていた、自分で関心があるものを見つけて、それについて自分なりに本やネットから調べて整理して、というのが大学のやり方だと思ってあなたを見ていたと。上2人も大学に行っていたので、そういうのもあったとは思います。 結構もめたんですけど、最終的にはうちの母に説得されました。「大学に行くとみんな本を読んでいる。教授とか学生が本や教科書のページをめくっていると、1ページめくるたびに小さい風が起きて、それが束になって学問の風になる。あなたにはそれを感じてほしい」って言われたんですよ。 ━━詩的ですね そうなんですよ。そうか、風が吹いているのか、それなら感じてこようかな、と思ったんです。 ━━そこから受験勉強を始めた? 受験しようと情報を集めたんですが、英語はできてたんですけど、ほかは高1、2ぐらいのレベルだったんで、今からセンター試験を受けるのは大変だなって思って。そのとい地元に、国際教養大学というのが開学2年目でできていて、英語で授業をやっていて、留学がカリキュラムに入っていたので、これだと思い、AO入試で受験しました。英語と、面接の試験のほかに、自己推薦の書類を用意するんですけど、自分はホームスクーリングしてきて留学して、と書きました。すんなり合格して、親にもいいんじゃないと言われたので進学することにしました。