米司法省が2事件で起訴取り下げ、トランプ氏「我が国最低の出来事だったが私は勝利した」
【ワシントン=淵上隆悠】米共和党のトランプ次期大統領が連邦法違反で起訴された二つの事件について捜査を担当している司法省のジャック・スミス特別検察官は25日、起訴の取り下げを裁判所に申し立てた。現職大統領を刑事訴追しない同省の方針に基づく判断だ。トランプ氏は任期中、これらの事件で裁きを受ける可能性がなくなった。
スミス氏が取り下げを申し立てたのは、2020年大統領選の敗北を覆そうとして連邦議会占拠につながった事件と、退任時に政府の機密文書を不法に持ち出したとされる事件だ。
トランプ氏は25日、自身のSNSで、起訴が民主党や同省による政治的策略だと主張した上で「我が国の歴史において最低の出来事だったが、私は困難に耐えて勝利した」と主張した。
スミス氏は、議会占拠につながった事件を所管するワシントンの裁判所に提出した書面で「合衆国憲法は現職大統領の起訴や刑事訴追を禁じているというのが、司法省のこれまでの立場だ」と説明した。来年1月20日のトランプ氏の大統領就任前に起訴を棄却するよう裁判所に求めた。判事は即日申し立てを認めた。
一方、機密文書の事件を巡ってはフロリダ州の裁判所が7月、スミス氏の任命手続きに問題があるとして起訴を棄却し、スミス氏が上訴していた。スミス氏は25日、上訴を取り下げた。
ただ、スミス氏は大統領が任期を終えるなどすれば、「起訴を妨げるものではない」と指摘。トランプ氏の退任後には公訴を再び提起できる余地があるとした。
トランプ氏は2件の州法違反を含む計4件で起訴された。不倫の口止め料を不正に処理したとして有罪評決を受けたニューヨーク州法違反事件は量刑の言い渡しが延期されており、州法違反も刑事罰を受けないまま就任する可能性がある。