樋口恵子 補聴器で医療控除が受けられず「老い」にはお金がかかると実感。心配してもしょうがない、老いが来たら「来た!」と思うしかない
平均寿命が伸びる一方で、長生きによる「老い」に直面する場面も増えています。以前と違う自分に戸惑ったり、忘れてしまうことに恐怖を感じている方もいらっしゃることでしょう。91歳になった今でも執筆活動を続けている、評論家・東京家政大学名誉教授の樋口恵子さんは<老いのトップランナー>として、「自分の老いを実況中継しながら、皆さんにお伝えしてご一緒に考えていきたい」と話します。その樋口さん、「老いはいつ、どういう形でやってくるかわかりません」と言っていて――。 【写真】「老いにはお金がかかります」と語る樋口さん * * * * * * * ◆そのときが来たら「来た!」と思うしかない 老いはいつ、どういう形でやってくるかわかりません。 心配してもしょうがないから、そのときが来たら「来た!」と思うしかないのです。 私はあまり嘆かずに、何とか自分を使いこなそうと思っています。 私も少しだけ耳が遠くなり、補聴器のお世話になっていますが、娘からは補聴器の使い方が下手だと言われて、毎日のようにけんかをしております。 耳鼻科では「重症ではないですね」と言われたのですが、高齢社会をよくする女性の会*1の小田原大会に向けて、相手の話が聞こえないと困るからと思って、自ら補聴器を作ったのです。 これが高いのよ。落としたら大変です。 安いものだと雑音が入ってしまうらしいけれど、私が買ったのはそこそこいいものでしたから、すごくクリアに聞こえます。 *1 高齢社会をよくする女性の会:樋口さんが理事長を務めるNPO法人。1983年設立、2005年にNPO法人化。
◆快適さを求めれば高額に 私は読売新聞のコラム「人生案内」の回答者を長年務めていますが、「おばあちゃんに『補聴器をつけて』と頼みたいけれど、頑としてつけてくれません」という相談も寄せられました。 高齢者のいる家族内では、聴力にまつわるコミュニケーションがいちばん早くダメになるようです。一般に視力よりも早くダメになるのが聴力なのです。 どうやら安い補聴器では雑音が入ってしまうようです。 それが不快で、二度と補聴器をつけなくなってしまい、家族が困っちゃう……。 もう少しお金を出せば雑音を抑えてくれるし、もっといいものなら自分の聴力の範囲に合わせて、相手の発する子音が聞こえにくくなるように調節もしてくれるとか。 結局、快適さを求めれば高額になるのです。
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