街クラブ『KAGO』のMARUコーチが語る創設からの15年間(後編)「大きな夢を目指せる人材を育てたい」
「学び続け、行動し続ける日本一の育成組織でありたい」
バスケスクールやクラブチームで一定の成果を出し、飯尾文哉(大阪エヴェッサ)や田中こころ(ENEOSサンフラワーズ)らプロ選手も輩出した。さらには、海外ツアーの企画やアパレルブランドとのコラボレーションといった様々な『たくらみ』を形にしているKAGOが、今後目指していくものは何なのか。代表の「MARU」こと丸田健司が語った言葉には、KAGOが15年にわたって前進し続けて来られた理由が詰まっていた。 ──創設から15年が経ちました。ここまで長かったですか? 今思えばあっという間でしたね。濃厚すぎて、振り返るのにすごく時間がかかりはするんですけど。2021年のJr.ウィンターカップで男子が準優勝して以降の3年間は、コロナ禍の影響でちょっと立ち止まって「こなす」フェーズに入ってしまったんですが、この3年間のような過ごし方をしていたら、僕らはすぐにごはんを食べられなくなるだろうなとか、自分たちがやりたかった仕事ってこういうことじゃないよなとか、そういうことをすごく考えさせられました。 ──改めて実感した「やりたかった仕事」はどんな仕事ですか? 単純に言うと「面白いこと」をやることですね。興味が沸いたことに対して、足を動かして、学んで、挑戦して、種をまく。立ち上げたときからずっと続けてきたことを、これから20年、30年と続けていきたいなと。女子日本代表のヘッドコーチを務めた恩塚亨さんが「ワクワク」「楽しむ」という言葉をよく口にされていましたが、これは普及・育成でも同じじゃないかと思うんです。自分たちが面白いと思うことをやってきた結果、全国大会で結果が出たりプロの選手が出てくるようになったので、なおさらそう思います。 特に僕は、ストリートバスケとかフリースタイルバスケとか、いろんな角度からバスケットを楽しんできたルーツを持っているので、これからももっともっと楽しいこと、楽しみ方を探らないとネクストレベルには行けないのかなと思っています。それは僕が尊敬しているTさん(GYMRATS代表の岡田卓也)やBANG LEEくん(Space Ball Mag代表)に学んだことでもありますね。 ──子供から見た大人は、どうしてもつまらなそうに見えがちです。コーチであり大人であるMARUさんがバスケや人生を楽しんでいる姿を見せることは、選手たちにとても良い影響を与えるような気がします。 そのとおりだと思いますし、僕自身もそう思うことで良い影響を受けています。というのも僕は元来、ものすごくだらしない人間なんです(笑)。KAGOの選手たちには「バスケットボールと私生活は切り離せないよ」と繰り返し伝えているけど、僕自身の私生活がしっかりしてるかと言ったら実はそうでもない。ただ、こうやって好きなことを仕事にしていなかったら、きっとそのだらしなさに向き合っていなかったんじゃないかと思うんですよね。 ──確かに、「自分はそういう人間」と受け入れてしまっている大人は多いかもしれません。 そういう自分をごまかしたり隠したりせず、むしろ改善しようとチャレンジしていく姿を見せながら生きていきたい。最近はそう強く思います。アルバイトで入ってくるコーチたちも「子供たちに『人の話を聞け』って言ってるのに自分もできていない」とか、いろんな悩みを抱えていますが、「完璧な人」でなく「向上心を持ち続けている人」でいることが、指導者として子供たちと接する上で一番大事なことだと思っています。 ──子供たちも「コーチと一緒に頑張ろう」と思えそうですね。 最近僕らは「日本一の育成を目指す」というテーマを掲げました。これまではあえて「日本一」という言葉を使わないようにしてきたんですけど、育成に答えはない以上、日本一学び続ける、日本一行動し続ける、それが日本一の育成だと考えます。 今は指導者やチームを選手が選べる時代ですから、変わり続けられない人や組織からは子供たちは離れていくと思います。KAGOが15年この業界で生き残れた理由や、福岡大学附属大濠高校の片峯聡太先生が僕をスキルコーチに招いた理由もそこにあるんじゃないかな。指導がうまい人、知識を持ってるコーチはたくさんいますが、常に新しいものを学び続けられる人はそう多くないと思うので。 だからこそこれからも海外に足を運び、学び続けることが僕の役割だと思っているし、KAGOのコーチを海外研修に連れて行くことや、世界最先端のバスケットボールに触れられる『GLOBALLERS』や『GR TOUR』は大切にしたいですね。