日本発スポーツビジネスの“業界標準”を作れるか ダンスのプロリーグ「D.LEAGUE」の挑戦
ダンスをする生徒はクラスのインフルエンサー
Dリーグの強みは、客層の若さにある。同リーグが開発したアプリによると、年代別のファン層では10代が15.6%で、20代が36.6%だという。性別では女性が63.8%、男性が36.1%だ。 「平均年齢が24歳と、他のプロリーグと比べてもかなり若いです。若年層の取り込みや、ファンになってもらうという意味では、ある程度クリアしていると思います」 平均年齢が40代を超えるJリーグの現状を考えると、Dリーグの強みがはっきりするはずだ。筆者も試合会場に足を運び、客層が若いことを実感した。 ただ、他のプロリーグも手をこまねいているわけではない。バスケットのBリーグは各種の改革を進めたことによって昨シーズンから人気が沸騰した。バレーボールでも2024年、新しくSVリーグが始まった。Dリーグにとって差別化のカギはSNSの活用だ。「Dリーグのファンは、TikTokなどのSNSは当たり前にする世代です。ファンの方々の手によってDリーグは勝手に拡散されるので、その辺りについては他のプロリーグと比べてアドバンテージがあると思います」 拡散方法は意外に素朴なものだ。例えばInstagramのリールにアップした動画は、各チームのリーダーに「拡散してください」とお願いする。 もう1つ、勝手に拡散されるケースもあるという。「ダンスをやっている子たちは、クラスの中のインフルエンサー的な存在なんです。学校の人気者たちがダンスをやるので、その子たちが『今これがはやっている』というと、周りの生徒もそれを見ます。そうなれば、あとは自動的に拡散されていくのです」 この状況は、若者との接点で悩む企業をひきつける。「若い世代にアプローチしたいけれども、どこにすればいいか分からない」「CMで宣伝してもなかなか若い世代に伝わらない」と悩む企業がDリーグをプロモーションの場と見なしているのだ。SNSに力を入れているDリーグは、いち早く若い世代に接続できる場になっている。スポンサーリストを見ると、タイトルスポンサーが第一生命。その他ソフトバンク、三井住友銀行、日本コカ・コーラといった「ナショナルクライアント」が名を連ねている。 ここまで若者を引き付けたのは、体育の授業でのダンス必修化が大きい。今の中学生約314万人は、水泳と同じく年間約9時間のダンスを習う。好き嫌いは別として、誰もが1回はダンスの道を通る。「TikTok、K-POPなどを見て、ダンスをやりたいと考える人はいると思います。ダンス自体がかっこいい、モテる、かわいいという要素があるので、自己承認欲求も満たしてくれるのです」 他のスポーツと大きく違うのが、Dリーガーはダンススクールなどの先生をやっているケースが少なくないことだ。ファンは憧れの先生に習える可能性があり、そうなった場合、「選手とファン」の関係から「先生と生徒」の関係に変わることがある。もし本当にダンスが上手になれば、「先生」が所属するチームに入り、生徒だった人がDリーガーとして踊れる可能性もゼロではない。