日本発スポーツビジネスの“業界標準”を作れるか ダンスのプロリーグ「D.LEAGUE」の挑戦
NFT、メタバース、アバター 2030年を目指す
デジタルネイティブでもある若いファンに、人気を博しているのがDリーグのNFTだ。選手と一緒に写真撮影ができるほか、香水のNFT(選手が選んだ香水を購入できる)と入場チケットのセット販売が好評だという。 「この事業を担当しているソフトバンクさまもNFTの成功事例をたくさん作りたいのだと思います。日本ではWeb3.0がこれから来るといわれていて、1度落ちこんだ時期もありましたが、2030年ごろに復活するでしょう。その時にはすでにDリーグに磁場ができていることを見越していると思います」 現時点では、多くの企業がNFTを収益化できずに途中で断念している。だが、そんな中でもDリーグは粘り強く事業を続ける方針だ。 「今後、メタバースやアバターが当たり前になるときのために、今のうちから少しずつ準備をしています。現時点では、多くの企業がこのことを理解していないように見受けられます。将来的には、ブロックチェーンというものを意識しないでも、多くの人が“いつの間にか”使っている状態を作りたいと考えています」 神田COOは、ギャランティーなども含め、全てをトークンでやりとりする世界までもが想定しているという。将来的に海外でもDリーグを始めた際、トークンの交換によって取引ができる未来まで考えている。仮想通貨がさらに普及する未来を考えたときに、Dリーグとして、対応できる状態を描いているのだ。
ロス五輪でブレイキンが正式種目から外れ Dリーグにはプラス
以前、Dリーグの平野岳史CEOにしたインタビューでは「Dリーガーがアルバイトをしなくても食べていける報酬を得ている」と語っていた。現在も年収で1000万~1500万円を稼ぐ選手も出てきているという。神田COOはDリーグが選手に寄与する意義を語る。 「Dリーグができる前は、(ダンサーにとっては)ダンスを教えるレッスン料が主な収入源でした。時にはイベントのゲストとして呼ばれることがあったかもしれませんが、あくまでも基本の収入はレッスン料だったのです。でもプロのサッカー選手は、サッカーを教えることがメインの収入にはなり得ませんよね。同じくDリーガーにとっても、将来的にはDリーグからの収入がメインとなり、レッスン料はいわば副収入に変わっていくことでしょう」 もともとDリーグの黒字化には、創設から7年ほどを擁すると想定してきた。だが5年目に入り、すでに黒字化も視野に入ってきたという。AmiなどのオリンピアンがDリーグに参戦する意義も大きい。五輪でダンスを初めて見たという観戦者も少なくなく、継続してダンスを観戦したいとき、Dリーグが受け皿になる。 2028年ロサンゼルスオリンピックでブレイキンが正式種目から外れてしまったことはDリーグにとってはマイナスにも見えるが、神田COOは「プラスだ」と話す。「正式種目のままならAmiやShigekixは今、Dリーグに参戦するよりも、4年後を目指して練習をしているでしょう」といい、Dリーグへ参戦することはなかったと考えている。正式種目としての復活は早くても2032年になりそうだ。その時点でも彼らはまだ五輪に出場できる年齢でもある。そしてそのころにはDリーグ自体も、プロリーグとしての完成度を高めているはずだ。