イスラエル政府が2025年1月に施行する“UNRWA活動禁止法”、それによるガザの人々への影響は?
TOKYO MX(地上波9ch)の報道・情報生番組「堀潤 Live Junction」(毎週月~金曜18:00~)。「New global」のコーナーでは、イスラエル政府が施行する“UNRWA活動禁止法”について取り上げました。 ◆イスラエル政府がUNRWAの活動を禁止に! イスラエル政府は2025年1月、パレスチナで人道支援を続ける国連機関「UNRWA(国連パレスチナ難民救済事業機関)」の活動を禁止する法律を施行します。 キャスターの堀潤曰く、同政府はUNRWAの一部職員がハマスによるイスラエルへの奇襲攻撃に関わっていたことなどを理由にこの組織を解体。他の国連機関に役割を移すべきだと主張しています。そこで今回はUNRWAの清田明宏保健局長に話を伺いました。 清田保健局長は、「国連機関や他の機関はみんな“UNRWAなくしてガザの支援はありえない”というのが共通した認識」とイスラエルの動向に対して大きな懸念を示します。 そして、「イスラエル側と交渉できなければ、(我々は)移動すること自体が危うくなる。(法律が施行されれば)外交特権もなくなり、我々の学校や我々の車などが外交上守られないので、いつ攻撃されるか分からない可能性が出てくる。ガザやヨルダン川西岸での活動ができなくなる危険性が非常に高い」とも。 さらには、「今、ガザの外来患者の4~5割はUNRWAが診ている。そして、避難所になっているガザの学校の半分はUNRWA運営の学校。普通の国連機関は現地国政府、あるいはその関係者にアドバイスすることが仕事なので(我々と)全然違う。代替してできるということにはならない。我々が(活動を)続けることが一番大事で、今それをやっている」とUNRWAの活動継続の重要性を訴えます。 ◆UNRWAの現地職員にも多くの犠牲者が… 現在、UNRWAの職員数は約1万3,000人。国際機関として国内外の方々と連携し、医療センターや教育施設などを運営しています。彼らは人が最低限生きるための支援を続け、同時にポリオワクチン接種など子どもたちを守る活動もしています。しかし、昨年10月のガザでの戦闘開始以来多く犠牲者が出ており、支援関係者の死者数は320人以上。そのほとんどがUNRWAの現地職員です。 また、昨年10月にUNRWAスタッフのイスラエル奇襲への関与が疑われると、各国が資金拠出を停止。カナダやオーストラリアなどが再開をいち早く表明するなか、今年7月に日本も再開。約52億円の拠出金を補正予算で組みました。しかし、最大の資金拠出国であるアメリカはこの放送時、資金拠出停止が続いています。 エッセイストの小島慶子さんはパレスチナの厳しい状況に対し、「戦争に関する意思決定をする人たちは戦闘では死なない人たちで、彼らが意思決定をした結果、戦闘やそれに巻き込まれて亡くなるのは市民など意思決定できない人たち。その人たちの命を救うために活動している組織の活動を停止することは、『その人たちは死んでもいい』と言っていると同じ。仮に奇襲に関与したことが理由であっても、大勢の人の命はどうなっても構わないという意思表示になっていることに衝撃を受ける」と悲嘆。 一方、食文化研究家の長内あや愛さんは、「清田さんのインタビューを拝見し、UNRWAの職員が自分の命も危険な状態で支援しているにも関わらず、その活動が止められるとなると(パレスチナの人々を)誰がどう救えるのか」と疑問を呈します。そして、「世界の構図を考えても難しく、誰も答えは持っていないと思うが、こうして(現地を知る人から)直接話を聞くことが第一歩。知っていくことが必要だと思う」と言います。 株式会社トーチリレー代表の神保拓也さんは「パレスチナで犠牲になっている難民などへの支援が止まることは絶対にあってはならない。それは大前提」と強調した上で、「イスラエル側が言う(UNRWAが)疑いのない組織かどうかについては、黒か白かで活動停止、継続ということより、グレーでも活動が継続できるような柔軟性のある組織運営も考えてほしい」と今後の支援体制について述べていました。