餅詰まらせ死亡の高齢者、三が日に2割占める 対策は?代替品も
餅を食べる機会が増える年末年始。心配されるのが窒息事故だ。 なぜ餅は喉に詰まりやすいのか。どうすれば防げるのか。喉に詰まった時はどのように対処すればいいのか。【杉田寿子】 【写真特集】餅詰まらせ死亡の高齢者、三が日に2割占める 対策は? ◇食べる前に汁物、飲み物を 東京消防庁によると、餅などを喉に詰まらせて救急搬送された人は、2019~23年の5年間で計368人。そのうち9割以上の333人が65歳以上の高齢者だった。月別では、2~11月の救急搬送者は10~20人台だが、1月が142人、12月が43人と年末年始に急増している。 消費者庁が18~19年の2年間のデータを分析したところ、餅を喉に詰まらせるなどして死亡した65歳以上の高齢者は合計661人に上った。高齢者の死亡事故の発生日は正月三が日が127件で、約2割を占めた。 のみ込む力は高齢になると徐々に弱ってくる。東京消防庁は、餅を食べる時の注意点として▽小さく切って食べやすい大きさにする▽急いでのみ込まずゆっくりとかみ砕いてからのみ込む▽なるべく一人で食べない▽食べる前に汁物や飲み物で喉を潤す(よくかみ砕かないうちに水分で流し込むのは危険)――を心がけてほしいと呼びかけている。 ◇際立つ餅の「付着性」 なぜ餅は喉に詰まりやすいのか。食品ののみ込みやすさは、消費者庁の「特別用途食品 嚥下(えんげ)困難者用食品」の許可基準である「硬さ」「凝集性(まとまりやすさ)」「付着性(べたつき)」の3要素で判定される。 嚥下障害をサポートする製品を販売するニュートリー(三重県四日市市)の研究によれば、付着性の数値(単位はジュール毎立方メートル)を比較すると、餅は「3932」にのぼり、だて巻きの「1116」、絹ごし豆腐の「869」に比べても数値が高く、嚥下困難サポートゼリーの「42」の100倍近かった。 同社広報の藤本彩乃さんによると「介護施設では嚥下防止に餅を提供しないことが多い。それでも餅は好まれるので『粥ゼリー粉』を使用した餅の代替レシピを紹介している」と話す。 粥ゼリー粉とは、米粉と咀嚼(そしゃく)をサポートするとろみ粉をブレンドしたもので、熱湯に溶かすとゼリー状のお粥ができる。これを冷やし固めると、餅の代替となるという。 粥ゼリー粉を販売している宮源(和歌山市)営業部の岩橋誠さんによると「餅特有の粘りはないが、原料は米なので餅の風味を楽しめる。餅の代替として喜ばれている」という。 ◇「窒息のサイン」見逃すな もし餅が喉に詰まってしまったらどうすべきか。 餅を食べている人が突然、親指と人さし指で喉をつかんで「窒息のサイン」を出している時や、声を出せずに顔色が真っ青になっている時には、窒息している可能性がある。 呼びかけて反応があり、せきをすることが可能であれば、できる限りせきをさせること。咳もできずに窒息している場合は、大声で周りに助けを呼び、119番通報と自動体外式除細動器(AED)の搬送を依頼し、直ちに気道から異物を除去する必要がある。 周りに助けを求められる人がいない場合には、119番通報より先に、直ちに異物除去を始める。気道異物除去には「背部叩打(こうだ)法」と「腹部突き上げ法」の2種類の方法がある。 背部叩打法は、傷病者が立っている場合や座っている場合に背中側から、手のひらの付け根で両側の肩甲骨の間を数回強くたたく。 腹部突き上げ法は、傷病者の後ろに立ち、へそのあたりに手を回して拳をつくり、みぞおちとへその間を圧迫するように腹部を突き上げる方法だ。腹部を圧迫することで内臓を痛める恐れもあり、妊婦や乳児には不向きだ。 東京消防庁の公式サイト(https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/lfe/nichijo/mochi.html)では窒息の応急手当てを動画で紹介している。