《1時間の運動で寿命が3時間延びる!?》『ゼロトレ』著者・石村友見さん伝授 「わかっているけど、続かない」を乗り越えて運動を習慣化する3ステップ
1時間の運動で寿命が3時間延びる!?
運動というと苦手意識を持つ人もいるかもしれないが、紹介する内容は「体の動かし方」であり、運動嫌いな人でも十分に行えるものばかりだ。 逆に言うと、健康な体を作るために激しい運動は不要なのだ。 ・昼休みに歩く ・駅の階段をのぼる ・子供と遊ぶ こういった小さな一歩を積み重ねれば、やがて健康に大きな効果をもたらす。 体を動かすことは生活の動作を向上させ、思考を明晰にし、気分を良くし、肥満を避け、病気のリスクを減らしてくれる。 ハーバード大学公衆衛生大学院卒で100歳のアメリカ人医師、ジョン・シャーフェンバーグは、特定の健康状態に苦しんだり不健康な習慣を持っていたりしても定期的に運動している人は、 運動をしない健康な人よりも長生きするだろうと述べている。彼は最終的に1時間の運動ごとに「最大3時間」寿命が延びると指摘している。 これは、1986年にニューイングランド医学ジャーナルに掲載された、ハーバード大学の卒業生1万7000人を対象に実施された画期的な疫学研究のデータ解釈から得られたもので、この情報は長年医療界でよく知られていたことを示している。 運動の身体的な効果にはざっと次のようなものがある。 運動の身体的効果の図 ところが、あなたはこう思ったかもしれない。 「わかっているけど、続かないんだよ」 その気持ちは痛いほどわかる。運動が体にいいとわかっていても、運動好きの人以外にはなかなか響かないものだ。なぜなら、人間にはあるバイアスが働いているからだ。
現状維持バイアスと確証バイアス
「現状維持バイアス」(Status Quo Bias)とは、変化を避けて現状維持を選ぼうとする心理的傾向のことで、1988年に経済学者のウィリアム・サミュエルソンとリチャード・ゼックハウザーの『意思決定による現状維持バイアス』によって提唱された。 この心理状態では、「変えることで好転する可能性がある」ことを薄々わかっているにもかかわらず、そのための選択や行動を避けることになる。「バイアス」とは偏りや偏見、先入観のことだ。 たとえば、あなたに次のような傾向があれば現状維持バイアスが強いと言えるかもしれない。 ・レストランでいつも同じメニューを注文する ・毎日の生活パターンがほとんど変わらない ・週末は出かけるより家で寝ていたい ・職場で「新しい方法」を試すように言われることがストレス ・ルールを変えることに抵抗がある ・「もう少し考えてからにしよう」と思いがち このような思考パターンがある人は、自分が行動しないことに対して理由が必要になる。そこでさらなるバイアスを生む。「確証バイアス」(confirmation bias)だ。 確証バイアスとは、自分が持っている先入観を肯定するために、自らにとって都合のいい情報ばかりを集める心理的傾向のことだ。たとえば、あなたに「英語を上達したい」という成長欲求があったとしよう。しかし現状維持バイアスが強いと、英会話スクールに通ったり、外国人の家庭教師をつけたりすることはとても億劫であり、平穏な日常が脅かされかねない。 そこで自分が「行動しない」ことを肯定するために、「自動翻訳機が進化しているので、これからは英語を話せるようになる必要はないはずだ」といった都合のいい情報と解釈で頭を埋めようとする。はじめは「英語が話せるようになりたい」と思っていたはずが、いつしか「行動しない私の選択は間違っていない」という心理にすり替わっていく。これが確証バイアスだ。 現状維持バイアスや確証バイアスのことを「認知バイアス」などと呼ぶ場合があるが、これらのバイアスが連鎖的に起こり始めると、生活に変化を起こすことはとても難しくなる。こうして自分の成長を阻害してしまう。