「それが一番だらしない」稲盛和夫が「目標達成率99%」の部門リーダーを厳しく叱ったワケ
松下幸之助と稲盛和夫。2人の天才経営者に共通するのが「1人1人の社員が主役」という経営理念である。その中でも稲盛はアメーバ経営なるメソッドを用いて、JALの再建を果たした。社員全員に役割と責任を与え、同時にリーダーも育てることができるアメーバ経営とは?稲盛の経営を間近で見てきた大田嘉仁が解説する。本稿は大田嘉仁著『運命をひらく生き方ノート 約三十年、稲盛和夫氏のもとで学んだこと』の一部を抜粋・編集したものです。 【この記事の画像を見る】 ● 「1人1人の社員が主役」 松下幸之助と稲盛和夫の共通点 松下幸之助さんは自分の経営スタイルを「全社員経営」と言われましたが、稲盛和夫さんは同じような意味で「全員参加経営」と言い、それを「1人1人が経営者」「1人1人の社員が主役」、さらには「全員重役経営」などとも表現しています。 松下幸之助さんも稲盛さんも目指す経営の方向は同じだと思います。しかし、私は、稲盛さんのほうがより1人1人の社員のモチベーションに配慮した経営をしているように感じました。 稲盛さんは、全員参加経営を目指す理由を「誰もが頑張ったと認められたい。一瞬一瞬を有意義に生きたいと願っている」のだから、社員に「押しつけるのではなく、自分からやらせるべきだ」と語っていました。 そのためには、全社員が「言われたことだけをやるのではなく、全体のことを考え、自分で判断し、行動するようになることが大切だ」と説明しています。1人1人の社員が「自分の役割を考える。会社への貢献が目に見えるようになる、仕事が面白くなる」ようにすべきだというのです。 その思いをシステム化したのが、稲盛さんの経営手法の代名詞のように言われるアメーバ経営です。
稲盛さんは、経営で一番大切なことは全員参加経営を実現することであり、アメーバ経営はそのために必要な経営手法だと話していました。 ● 売り上げや経費などの重要な数字は 全体ではなく個別で見ないといけない アメーバ経営においては、「1人1人が経営者」であり、「1人1人の社員が主役」です。これは全員参加経営というより、稲盛さんの言う「全員重役経営」なのかもしれません。つまり、1人1人の社員が中小企業の社長や役員のような責任感とやる気を持って仕事ができる仕組みなのです。 アメーバ経営では、組織を事業ができる最小単位に分けて、それぞれにリーダーを置きます。これを稲盛さんは「組織を小さく分けないと現場に関心が向かない」ので「事業を因数分解して、できるだけ多くの採算部門に分ける」とも説明しています。 このとき注意すべきことは「複合体のデータを見て判断してはダメ」ということです。1つのアメーバに売上や経費の性質が違う事業体が混在していると、正しい判断、正しい経営はできないからです。