「それが一番だらしない」稲盛和夫が「目標達成率99%」の部門リーダーを厳しく叱ったワケ
予定組みの際、上司はどうしてもやや高めの目標を掲げようとしますが、現場の社員は実情が一番分かっているので、やや保守的な目標を目指そうとします。そこには当然乖離が生まれますが、それを上司が力ずくで埋めるのではなく、十分な時間をかけて、徹底的に議論し、トップダウンとボトムアップを融合させた、誰もが心の底から納得できる予定を組まなくてならないというのです。なぜなら、全員が達成できると心から信じている予定であれば、必ず実現できるはずだからです。 稲盛さんは、「アメーバ経営は予定組みに始まり、予定組みに終わる」と説明し、このように全員参加で徹底した議論に基づいたマスタープランや月次予定の作成プロセスの大切さを強調しています。 そのようにして作成された直近の月次予定は、丁寧なプロセスを経て全員の総意のもとで決められたはずですので、下振れも上振れもない100%達成が求められます。ですから、99%の達成率であれば普通はよくやったと褒められるのでしょうが、稲盛さんは「それが一番だらしない。あとの1%が達成できなかったとすれば、それはリーダーの執念の問題だ」と厳しく指摘していました。
● JALが経営改善できたのは 1%の数字までこだわったから このような数字への厳しさは、JALでも同じでした。当初、毎月3日間にわたり開催されていた業績報告会では、部門ごとに売上科目ごとや経費科目ごとの予定が100%達成できないと、稲盛さんはその理由を厳しく追及していました。その結果、月次予定を100%達成できる責任感があり、しかも数字に強いリーダーが育っていったのです。 稲盛さんはアメーバ経営を正常に機能させ、全員参加経営を実現させることができれば、どのような事業でも成長発展させることができると話しています。 一方で、アメーバ経営を単純に業績アップのための便利なツールとして形だけ真似して、結果として正常に機能させることができなければ、リスクもあると率直に話しています。 たとえば、アメーバリーダーが自部門の利益ばかりを考えて利己的な経営判断をするようになると、他部門との軋轢が生まれ、会社がバラバラになってしまうというのです。