バンクシーの新作、4作目のオオカミが盗まれる。動物シリーズは物語? それともパレスチナへの支持表明?
ロンドンで連日登場しているバンクシーの新作、4作目の動物は白い衛星アンテナに描かれた遠吠えするオオカミだった。英ミラー紙によると、ロンドン南東部のペッカム地区で一夜にして出現したという。しかし、オオカミの絵は出現直後に消えてしまった。覆面姿の何者かがアンテナを持ち去ったことから、盗まれたものと見られる。 バンクシー最新作の動物シリーズは、8月5日のヤギから始まった。ロンドン南西部リッチモンドのキュー橋近くに現れた1頭のヤギは、建物の壁を支える柱状の構造物の上でかろうじてバランスを取っているように見え、足元から崩れた小石が落ちる様子が描かれている。また、近くに取り付けられている監視カメラが、作品全体を映すよう向きを変えられていた。 翌6日には、高級住宅街として知られるチェルシー地区で、ビルの側面に2頭のゾウが描かれているのが見つかった。2つの窓から顔を出したゾウは、お互いに向かって鼻を伸ばしている。 さらに7日、ロンドン東部ブリック・レーンにある橋の側面に、ぶらさがって移動しているような3匹のサルが出現した。バンクシーはそれぞれの作品の写真を自身のインスタグラムに投稿しているが、キャプションはなく、なぜ早いペースで発表しているのか、なぜ動物なのかは明らかになっていない。 そのため、ファンの間では作品が何を意味するかについて、さまざまな推測が飛び交っている。たとえば、バンクシーがこれまでインスタグラムに投稿した4枚の写真のうち、ヤギを除く3枚には、自分の近くに動物の絵があることに気づかない通行人が写っている。そこに着目したファンはこうコメントした。 「絵に気づかない人を写真に入れたことで、人間が野生生物について無知であることを伝えようとしているのは間違いない」 インスタグラム上では、「人類はもう長くない...動物に取って代わられる」という悲観的なコメントや、このシリーズは物語になっていると考えるこんなコメントもある。「孤立無援の1頭、互いのことを気遣う2頭、ともに困難を乗り越えようとする3匹?」 さらには、「バンクシーにパレスチナのことを描いてほしいという人はたくさんいる。ヤギの脚の隙間は、ガザの人々に残されたものの形を表しているのではないだろうか」というパレスチナ支援説から、自然とのつながりを取り戻す必要性、家族やコミュニティの大切さを表現しているとするものまで、さまざまな推測が入り乱れている。 ただ一つ確かなのは、誰もがさらに多くの作品を待ち望んでいるということだろう。あるファンはこうポストしている。 「明日もまた同じ時間に? 」 (翻訳:石井佳子)
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