世界の新潮流:「観光する」から「食べる」に代わった旅の目的
■ 日本に来たい最大の理由は「食」 ここに興味深い調査がある。 2021年10月に実施された「アジア・欧米豪 訪日外国人旅行者の意向調査」(日本交通公社・政策投資銀行開催)は、世界12地域6000人あまりに「次に海外旅行したい国・地域」をアンケートしたもの。 2021年といえばコロナ禍で世界中が閉ざされ、誰もが「早く回復して一番好きな国に旅行に行きたい」と思っていた時期である。 そのアンケートで、アジア対象・欧米豪対象でともに日本が1位、しかもその理由は「食事が美味しいから」だったのである。 コロナ禍を脱した2023年1~3月に日本政府観光局(JNTO)が世界22市場を対象とした訪日旅行に関する調査結果を発表した。 これも「今後、行きたい旅行先」として、東アジア・東南アジア地域では10市場中9市場で日本が1位。 欧米豪・インド・中東地域でも、大半の市場で日本が上位5位以内となっており、そのなかでも日本の地方に行きたいと答えている旅行者が半分以上。 しかも全22市場の合計では、旅の目的として「ガストロノミー・美食」を1位にあげている。 電通が2024年、世界15の国・地域の20~59歳 7460人を対象に調査した「ジャパンブランド調査2024」でも、「観光目的で再訪したい国・地域」の1位は日本(34.6%)。 2位シンガポール(14.7%)とは圧倒的な差だ。 しかも日本に期待していることの1位は「多彩なグルメ」(28.6%)である。 アメリカン・エキスプレスが日本を含む世界7か国の世帯年収が7万ドル以上の人を対象にした2023年2月実施の調査でも、訪れたいアジアの国の1位は日本(40%)。 そして調査対象者の81%が「旅行中に最も楽しみなことは地元の食べ物や料理を味わうこと」だと言っている。 つまり、コロナ禍からアフターコロナを通じて、世界中の旅行が大好きな人々はずっと「まずは日本に美味しいものを食べに行きたい」と思っているのである。 もちろん日本が「安全・安心・清潔」であることも背景にあるだろうが、彼らが日本に期待する一番大きなものが食であることは明らかだ。