東大名誉教授・松下正明(87)が断言「認知症は病気ではありません」
周辺症状を減らす方法
「周辺症状が出た高齢者には、『否定しない』、『怒らない』、『感謝する』の3つを心がけることがよいと思います。高橋医師は認知症の人の気持ちを逆撫でするような、『しっかりしてよ』といった励ましをできるだけ減らす方がよいと教えてくれました。また、『違うでしょ』と否定するのでなく『そうだね』とニコニコ笑いかけてから、『こういうのはどうかな』と提案することが大事だといいます。さらに、『ありがとう』と感謝の意を示す回数を増やせば、徘徊、暴言、暴力といった周辺症状は自然と減っていく。認知症の人は『自分で料理を作った』、『買い物に出かけた』など、悪意なく作り話をしてしまうケースも多いのですが、頭ごなしに否定するのではなく、話を合わせてあげるのも良いことです」
誤解や偏見をなくすことが、最も大切
取材時、奥野氏は高橋医師から、「人間の臓器は80年、90年と使えば耐用年数が切れます。同じように脳の神経細胞も耐用年数が過ぎれば、認知機能が低下してもおかしくはない」と説明された。この言葉によって、認知症は病気ではないという考えが腑に落ちたそうだ。 冒頭の松下医師も奥野氏にこう語ってくれたという。 「社会が認知症をかかえる老人を認め、85歳以上になれば誰もが認知機能が衰えるのだという考えを共有することが大切なのです」 奥野氏は、6年にわたった取材をこう振り返る。 「ある認知症の女性と手をつないで外を歩いたことがありました。その後、彼女に会ったとき、私の顔も名前も憶えてはいませんでした。でも、『この人とは楽しい時間を過ごした』ということは憶えてくれていたようで、とても嬉しそうに迎え入れてくれたのです。『認知症になったら、理性や人格が壊れ、何も分からなくなってしまう』といった誤解や偏見をなくすことが、最も大切なのだと思います」
「週刊文春」編集部/週刊文春 2024年11月28日号
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