注目集まるパラスポーツ だが…競技によって人気に濃淡 部活やチーム発足で世間に普及するものもあれば、認知不足のものも
28日(日本時間29日未明)にパリ・パラリンピックが開幕する。長野県内では2028年に全国障害者スポーツ大会(全障スポ)の開催を控え、パラスポーツに注目が集まることが期待されるが、地域や競技によって普及に濃淡が出ている。障害の有無にかかわらず取り組む人が増えているケースが出てきた一方、養成した指導者の活動機会が限られているといった課題も浮かぶ。(岩安良祐) 【写真】「ボッチャ専門部」で指導する小林京子さん
中学校部活動に「ボッチャ専門部」
「次に向けて頑張って」。7月上旬、千曲市で行われたパラスポーツ「ボッチャ」の練習。ミニゲームで負けて涙を浮かべる同市更埴西中学校1年の矢島慧(けい)さん(12)の背中を、同市の県稲荷山養護学校高等部3年の井浦ゆうとさん(18)が軽くたたいて励ました。矢島さんは目を拭いながら井浦さんの言葉に耳を傾けた。
2人は千曲市と埴科郡坂城町の中学校部活動の地域移行で今春発足した「ボッチャ専門部」に所属。井浦さんはクラブ長を務める。練習は月2回で、この日は部員の同養護学校の児童・生徒や市内の中学生、保護者、市ボッチャ協会員ら20人ほどが参加した。「なかなか思い通りに投げられない」と悔しさをにじませる矢島さん。井浦さんは「パリ・パラリンピックが近づき、より多くの人に興味を持ってほしい」と願った。
千曲市では全障スポのボッチャ会場に同市の「ことぶきアリーナ千曲」が選ばれたのをきっかけに、健常者にもボッチャが浸透しつつある。公民館活動では球技大会や運動会からボッチャ大会に切り替える地区が相次ぐ。雨天でも開催でき、熱中症の危険性が低く、けがをしにくいことから、小学校でもクラブ活動として行われるようになった。
障害の有無にかかわらず一緒にプレー
普及の背景には指導者の尽力も大きい。ボッチャ専門部で指導の中心を担う小林京子さん(70)は、市内で障害者を含む住民向け総合型スポーツクラブを運営。5年前に県障がい者スポーツ協会(長野市)が養成する「パラスポーツ指導員」の資格を取得し、22年に市ボッチャ協会を設立した。「この体育館で行われていることが本当の『共生社会』。部員たちが大人になって、この光景を思い出してほしい」と期待する。