読み解くカギは"ちぐはぐインフレ対策"と"化石燃料への回帰"! トランプ復活で結局、日本経済はどーなるの!?
■米中対立は悪化しない では、今後注目すべきポイントは何か。重要なのは、公約がどの順番で実現するかだ。カツキ氏は対中関税の引き上げが最も現実的だとみる。 「ほかの政策は実現までに議会を通すなど、さまざまな障壁が存在するのに対し、関税の引き上げは大統領令を出すだけで簡単に実現できてしまうんですね。中国への経済制裁はすぐに手をつける可能性が高そうです」 となると、対中関係は冷え込むのだろうか。経済学者の飯田泰之氏はこう解説する。 「民主党はウイグル、台湾、チベットなどの人権、領土問題を中国との争点にしていましたが、これは交渉の余地がほとんどありません。一方、トランプの対中要求は経済問題が中心です。 経済ならば中国も譲る余地があります。経済交渉で譲歩して支持率が落ちることを気にする必要はないですから。結局、トランプは中国に対して言葉がただ強いだけで、態度は強硬ではない。米中対立は改善も悪化もしないでしょう。 とはいえ、中国を安全保障上の脅威ととらえることには変わりない。西側諸国で閉じたサプライチェーンの構築は加速するはずです」 飯田氏は、エネルギー政策が今後のカギを握るとみる。 「トランプは化石燃料への回帰を主張しています。バイデン政権で導入された石油・ガスの開発規制を撤廃すればエネルギー価格は下がりますから、物価高を抑えられます。これがインフレ抑制とほかの政策を同時に達成する唯一の道でしょう。 ただし、エネルギー価格が落ち着くにはタイムラグがありますから間に合わない可能性が高いです」 では、日本経済への影響を見ていこう。
■円安基調で物価高が続く よほどうまくやらない限り、アメリカはこれからインフレに見舞われるはずだ。すると先ほど説明したとおり、為替はドル高円安に動くことになる。 「実際、トランプの優勢が伝えられた段階で、ドル高円安に振れました。この傾向はしばらく持続すると思います」(カツキ氏) でも、トランプはドル安にしたいのでは? 「それはそうなのですが、ドル高を食い止めるための具体策は特に打ち出せていないんです。ほかに優先すべき政治課題もありますから、しばらくは円安が放置されると思います」 ということは、日本にとっては輸入物価が高止まりすることになる。 「日本の物価については、トランプ復活は負の影響が大きいのではないでしょうか。となれば日銀は12月での利上げを真剣に検討せざるをえなくなる。そうなると穏やかに回復基調をたどっている国内景気を腰折れさせかねないため、非常に心配です」 カツキ氏のシナリオに同意した上で、飯田氏はチャンスを見いだしている。 「米国が化石燃料に回帰するタイミングで、世界的に再エネシフトが少し減速すると思います。その波に日本も乗れれば、物価上昇は抑えられるはず。現状、日本にとって再エネのコストはバカにならないですからね。 ただ、石破首相は脱原発を掲げてきた。そのあたりがトランプと噛み合っていないように思えます」 ところで、西側諸国で完結したサプライチェーンを築くということは、熊本のTSMCの例のように、日本に製造拠点を移す企業が現れるということだ。となれば、国内の雇用も増えないだろうか? 「可能性はありますが、ハードルは思いのほか高いです。まず、就労人数の確保。製造業は地方に生産拠点をつくることになりますが、日本は人口が東京一極集中となって久しい。さらに、電力の安定供給の問題もある。問題は山積しています。 唯一の救いは、石破首相は目玉政策として地方創生を掲げていること。ぜひともチャンスに変えてほしいですね」