トランプが和平を実現しても、ウクライナ戦争が終わらない「意外な理由」とゼレンスキーが迫られる「究極の二択」
トランプ再選後の世界はどうなるか。ウクライナ戦争はいつ終わるか、台湾有事はいつ起きるか、そして日米関係のゆくえは……? アメリカ政治を専門とする前嶋和弘教授と、コーカサス地方・安全保障を専門とする廣瀬陽子教授が、トランプ外交から世界情勢を語るスペシャル対談をお届けします。 【写真】大胆ショットに全米騒然…トランプ前大統領の「娘の美貌」がヤバすぎる! まえしま・かずひろ/'65年、静岡県生まれ。上智大学教授。前アメリカ学会会長。『混迷のアメリカを読みとく10の論点』『分断されるアメリカ』など、著書多数 ひろせ・ようこ/'72年、東京都生まれ。慶應義塾大学教授。『ハイブリッド戦争』『日本人が知らない! 中国・ロシアの秘めた野望』など、著書多数
キーウ訪問で見えたこと
廣瀬:実は、この対談の直前(11月11日)まで、ウクライナのキーウにいました。 前嶋:戦禍のウクライナの人々の暮らしぶりはいかがだったでしょうか。大変気になります。 廣瀬:キーウに限って言えば、町はとても活況でした。深夜0時から朝5時までは外出自粛令が出されていますが、夜になるとネオンがきらめいて華やかです。 空襲警報が頻繁に鳴りますが、人々は慣れたもので、ドローンやミサイル攻撃でもない限りはシェルターにも入らず日常生活を続けています。 とはいえ、この異常な状況が続くことについては「もういい加減にしなければ」という意識も高まってきているようです。 前嶋:米大統領選の直後でもありましたが、トランプの再選については、ウクライナの人々はどう受け止めていますか。 廣瀬:意外にも、ウクライナはバイデンに相当失望していて、「トランプのほうがマシだ」と言う人も多いのです。
ロシアに配慮した戦争
というのも、ウクライナ戦争はもう2年半以上続いています。「バイデンはウクライナへの武器供与が遅く、長距離兵器の使用を制限して、ロシアに配慮してきた。そのせいで、多くの人命と領土を失った」と考えるウクライナ人も多いのです。 ハリスが大統領になって同じ路線を続けていたら、ウクライナはもう持たない。この閉塞的な状況を変えられるのは、トランプしかいないのでは……とも受け止めていたように感じました。 前嶋:トランプは「ウクライナ戦争を24時間以内に強制終了させる」「大統領に就任するまでに終わらせる」と豪語しました。いま、彼がそのために動いていることは間違いありません。 ただ、トランプはロシア寄りの発言をくり返していますね。「アメリカの支援で、ウクライナ消滅の危機は去った。ロシアに占領された東部と南部はロシア語話者も多い。割譲してもよいだろう」、そんなことを言っている。ウクライナはそれでよいのでしょうか。 廣瀬:まったくよくないですね。もしもウクライナが領土をあきらめて和平を結んでも、戦争は終わらないと考えています。というのも、'14、'15年にウクライナ東部で親ロシア派との停戦に向けたミンスク合意を二度にわたり結びましたが、ロシア側は停戦違反をくり返しましたから。今回表向きの「停戦協定」を結んでも、ミンスク合意後と同じように、ロシアは数年で武力を回復させて、また侵攻してくるに違いないと思っているのです。 そんなウクライナにとって一番望ましいのはNATO加盟ですが、現状ではロシアが許さない。NATOに代わる新たな集団安全保障システムを用意できるなら、ウクライナも何らかの譲歩をするかもしれませんが、その展望はまだ描けません。