【震災1年】日本の避難所いつまで雑魚寝:能登半島地震でも「生活の質」課題 台湾に学ぶ民間主導型
改善に動き出した日本
内閣府は能登半島地震1年を前にした2024年12月、災害時の避難所の寝食やトイレの環境を改善するため自治体向けの指針とガイドラインを2年ぶりに改定した。能登半島地震で避難所の環境が問題となったことなどを受け、政府として改善を迫られた格好だ。 具体的には、災害時にも人道的な環境を確保するための国際基準「スフィア基準」を踏まえ、「20人に1基のトイレ」「1人3.5平方メートルの居住スペース」といった数値を明確にした。また段ボールベッドなどの備蓄、キッチンカーの活用など食事の質の確保、仮設風呂など生活用水の確保なども記した。 坂井学・内閣府防災担当相は会見で、「全国どこで災害が起きても、同等の避難所の環境が確保できるよう、環境改善を全国レベルで進めていきたい」と述べた。石破茂首相は12月24日の記者会見で「人権を基本に置いたスフィア基準を踏まえ、避難所の環境改善を強力に進めるべく、防災庁の在り方も具体的に検討を深めていく」と決意を述べた。 ただ、避難所の運営は、市町村の担当事務で、実際には現場の状況に合わせて対応することになる。能登半島のような過疎が進むエリアでは、自治体は予算、職員ともに十分な状態ではない場合が多く、緊急事態時のスムーズな対応はハードルが高い。 能登半島の自治体関係者からは「1年前の能登半島地震では、住民だけでなく正月の帰省者も避難所に押し寄せ、取りあえず雑魚寝してもらった面もある。避難所の状況はさまざまで、ガイドラインを整備したところで、その通りに実施できるかどうかはわからない」「地域によっては住民の結束が固く、仕切りやテントは必要ないという声もあり、状況に応じた対応も重要」との指摘もある。 坂井担当相は「非常時は混乱の極みにあると想定される。場所によっては基準を満たすような環境をつくれない所も想定はされる。しかし、最善の対応ができるよう事前に訓練やさまざまなトレーニングをしていただきたい」とした。
民間の生かし方焦点
青田教授は「政府がきめ細かなガイドラインを作っても、手ほどきなしに避難現場で実践できるとは限らない。日本は主に行政が避難所の運営を担う形式だが、経験やノウハウがないと支援に融通が利かなくなる。避難所の環境改善に向けて台湾から学ぶべきことは、自治体職員が丸抱えするのではなく、民間の力を活用できるよう連携し訓練を重ねることだ」と話している。 取材、文:ニッポンドットコム編集部 鄭仲嵐、松本創一