東京大学大学院合格の裏側――ニッポン放送・吉田アナウンサー×アニメ宣伝プロデューサー・栁瀬一樹氏特別対談
柳瀬:それができる人というのは越境者であり、アカデミーとメディアのトランスレーターになることができます。そしてそれができる人の数は非常に少ないと思います。 ――今日一日で「吉田尚記、東京大学大学院合格」という情報が持つ意味がどんどん変わっていったように思えました。この情報を中心にして、お客さんが前のめりになって拡散させる姿に、「このネタは、もしや乗っかっておいた方が楽しいんじゃないか?」と思ってしまうような。 柳瀬:要はコンテンツを作るということなんですよね。コンテンツの受け手、特に今日のお客さんは“楽しみ方のプロ”が多かったじゃないですか。 吉田:多かったですね。
柳瀬:渡されたものを、どうすれば一番美味しく食べることができるかということを把握しているんですよ。だから、これは乗っかっておいた方が絶対楽しいと判断し、「OK、分かった、そっちの方向ね!」と理解し、躊躇なくやってくれたわけです。だから、最初に言った“協創”という意味でいうと、吉田さんと私の間の関係ではなく、私たちとお客さんとの間にあった関係なんですよね。 ――皆さん、吉田さんのネタを拡散させるのを楽しんでる感じが確かにありました。 柳瀬:そこまで含めて今日のコンテンツというふうに受け取ってくれたんだと思います。 吉田:何をするイベントなのか詳細を発信しないまま当日を迎えるということで、今日の内容に色々驚いてくれた方もいらっしゃったと思いますが、私が一番驚いたのは今日のお客さんの中で「それぐらいのことありそうだと思ってた」と言われたことですね。予想の範囲内だったという(笑) 柳瀬:お客さんからしてみれば自分は何を見せられているんだろう、と思ってしまう内容だったんだろうな。でも、どの場面を思い返してみても、皆さんがそのときを楽しんでくれてよかったなと思いますし、またこんな感じで皆さんが驚いてくれるイベントを企画したいなと思いました。 吉田:ですね。 柳瀬:現代は構造主義がはやりすぎていて、構造でしか世の中を把握できない状態になっている。それは決して悪いことではないけれど、枠組みに囚われて、枠組み自体を疑おうとしないんですよね。普通、トークイベントで司会者の大学合格発表はしない。それが普通。でもそこを突破したほうが断然面白いです。このあたりが「邪神ちゃんは何でもあり」と言われているゆえんです。 吉田:その通り。 柳瀬:これは昨今流行りの「リスキリング(歳を経てからの学び直し)」にもつながるところがあります。挑戦してみて、今自分が置かれた環境という枠組みを突破したらよいのです。