東京大学大学院合格の裏側――ニッポン放送・吉田アナウンサー×アニメ宣伝プロデューサー・栁瀬一樹氏特別対談
――イベント中なのに、皆さんが自分のスマホを見つめて、ここのサイトに出ています! と報告し合う時間がちょっと面白かったです。 柳瀬:そうでしたね(笑) 吉田:今までやったことのないことをやってみようというのが“邪神ちゃんイズム”じゃないですか。合格発表みたいなものは別にどこかでやったっていい。でも、今日は誰もやっていなかったようなことにトライして、そしてそれがちゃんと立派なコンテンツになった。 柳瀬:見事になりましたね。 吉田:私はラジオの人間なので、生々しさが売りじゃないですか。生活感というか、この人は生きているんだなという感じがないと、ラジオパーソナリティである意味がないじゃない。 柳瀬:だって“パーソナリティ”ですもんね。パーソナリティが当たり前の人生を送っていたら、リスナーの皆さんとの差異が描けない。そういう意味では今回、吉田さんは他とは違うものを見せつけたと思います。まず受験しようというふうに判断したのもすごいし、そこからくじけずにやり切ったのもすごい。結果、合格したことももちろん。
吉田:受験にあたって柳瀬さんが指導してくれましたが、本当に何をどうすればいいのか、全くわからない状態のところからで。CiNiiという論文検索サイトがあるというところからスタートし、先行研究が沢山あり、先行研究のどこが自分の主張がつながるのか、ちゃんと全部丁寧に探していく。「研究者の方々は、本当にこういうことをやっているんだ」って身をもって実感しましたね。 柳瀬:私が吉田さんにお伝えしたのは研究者の人たちの書き方・話し方で、この世界ではこういう伝え方をすれば、相手に通じるんだよというお作法をお伝えしました。そうしたら吉田さんはやっぱりコミュニケーションのプロだから、さっさとそれを習得して、ちゃんと相手に伝わる、この世界で伝わるしゃべり方、書き方に変わったんですね。 ――普段のラジオでの話し方・伝え方とで一番大きな違いは何でしょうか。 柳瀬:普段の吉田さんの話し方は言葉の省略が多いように思います。相手も理解しているはずだから、ここは割愛しようというつもりで話していくので、受け手にはスムースに内容が伝わるようになっているのですが、研究の世界ではそれではダメなんです。 吉田:まさにそう思いました。 柳瀬:だから、最初吉田さんから提出された文章は論文ではなくエッセイのような感じでした。でも最終的には立派な論文、研究計画書になりましたよ! 吉田:アカデミーでの表現方法は「なるほど、こんなに緻密で正確にできているんだ」ということがわかったんですよね。まるでプログラミングのように。それと同時に、これをそのままラジオでしゃべっても誰も聞いてくれないだろうなあということもわかりました。このことから、我々メディア人は話し相手に応じた話し方を身につけるべきだと感じます。