７月28日に行われた準決勝の直後、プールサイドで７分にわたり座り込んだ池江。人目をはばからずに涙を流した

３度目の挑戦は涙の結末となった。 パリ五輪で競泳女子100ｍバタフライに出場した池江璃花子（24）は、準決勝で敗退。試合後にはこみ上げる想いを堪(こら)えることができなかった。 【オーラ全開！】お似合い…！バレー日本代表「エース夫婦」古賀＆西田のショッピング姿…！ 「今大会では終始、自身の泳ぎに納得していない様子でした。予選後の囲み取材も３分足らずで切り上げてしまった。準決勝敗退後、『頑張ってきた分だけ無駄だったのかな。いつまで苦しまなければいけないんだろうと思う』と号泣しながら話す姿に、もらい泣きしそうになりました」（現地で取材した本誌記者） またしても憧れ続けた五輪のメダルには届かなかった。それでも、「パリまでの道のりは無駄ではなかった」と語るのは、リオ五輪女子４×100ｍリレーで池江とチームメイトだった松本弥生氏だ。長いリーチを生かし、３位で折り返した前半50ｍの泳ぎに希望を見たと言う。 「前半から積極的に勝負する、強い時の池江選手のレース展開が戻ってきました。肩甲骨の広い可動域を活(い）かしたダイナミックなフォームも全盛期の力強さが見られた。ただ、今回は後半にバテてしまった。とくにラスト25ｍを過ぎたあたりからは顕著だったので、今後は持久力が課題になると思います。 試合直後にはＳＮＳに『４年後、リベンジしに帰ってきます』と投稿しましたが、そう簡単に気持ちの切り替えなんてできないはず。そんな状況でも周囲が望む”強い池江”に応える精神力は、相当タフなものがあります。その強靭(きょうじん)なメンタルがあれば、今回の敗戦も、必ず乗り越えられるはずです」 思えば、池江はそのキャリアの中で何度も困難に直面しては、それらに打ち勝ってきた。その最たる例が、’19年に判明した白血病だ。抗がん剤の副作用で一日に５回も嘔吐を繰り返し、体重が15㎏以上落ちたこともあった。それでも努力を重ね、’21年にはリレーメンバーとして東京五輪出場を勝ち取った。 パリ五輪の前哨戦である昨年の世界水泳でも再び挫折を味わった。得意の100ｍバタフライと50ｍ自由形でまさかの予選落ち。この２種目では’15年の日本選手権以来の予選敗退に、「なんか泣きそうになっちゃった」と、その心境を吐露した。 しかし、池江は諦(あきら)めなかった。 「強豪国のオーストラリアへの武者修行を決意。10㎏の重りを装着し、25ｍを８本泳ぎ切るなど過酷なトレーニングに打ち込み、力をつけていきました。すべては五輪でメダルを獲りたい、という想いがあるからこそです」（水泳連盟関係者） 池江は自著『もう一度、泳ぐ。』の中で、〈（どんな試練も）病気の時のしんどさに比べたら全然きつくはないでしょ、って自分に言い聞かせています〉と過去の経験が糧(かて)になっていることを明かしている。困難を克服するたびに、一回りも二回りも大きくなって帰ってきた池江。松本氏もその進化に期待を寄せる。 「今大会に出場中の鈴木聡美選手が33歳で自己ベストを更新したように、30代でも記録を伸ばす選手はたくさんいます。池江選手が28歳となる４年後、さらに大きくなって戻ってきてほしいです」 涙の敗戦を乗り越え、さらに逞(たくま)しさを増した姿を見せてくれるはずだ。 『FRIDAY』2024年8月16日号より