ポルシェのターボに、期待しかないワケとは? 歴代モデルに乗って分かったその魅力を考える
ターボの進化
続いては1989年式の「944ターボ」を試した。フロントに積まれるエンジンは直列4気筒2.5リッターターボで、最高出力は250ps。最高速は260km/hとされていた。 15年の間の技術の進化は想像以上で、排気量は911ターボより小さいのにパワーはほぼ等しく、何よりターボラグは感覚的には3分の1くらいでしかない。おかげで、とても速くて、とても扱いやすいのだが、よく出来すぎていてあまり面白くはないかな、とも正直思ってしまった。何を贅沢言っているんだという話なのだけれど。 トランスアクスルレイアウトのシャシーも同様で、走りはFRスポーツカーとして、まさに理想的な仕上がりと言える。よく曲がり、トラクションもかかり、ロードホールディングも上々である。 80年代、日本の自動車メーカーがスポーツカーの教科書として走りの参考にしたのが、この944ターボである。マツダ「RX-7」、日産の「スカイライン(R32)」、トヨタ「スープラ」……これらに影響を及ぼした走りは、今もまったく古さを感じさせないものだったのだ。 初代「カイエン」のターボSは、更にその17年後のモデルである。エンジンはV型8気筒4.5リッターツインターボで、最高出力は521psを発生する。車重は約2.4t。しかしながら最高速度は270km/hである。 当時はSUVとしてはきわめてスポーティだと感じたカイエンだが、改めて乗ると着座位置は高く、乗り心地もふんわり。ある意味、SUVらしい感触が色濃い。 しかしながら動力性能は強烈で、トップエンドに向けて二次曲線的に盛り上がるパワーが巨体を突進させる様には、未だに仰け反らされる。一方で、ゆったり走らせている時には余裕のトルクを感じさせ、回転域を問わずレスポンスも良好。つまり全域で扱いやすく、しかも凄まじく速いのだ。 要するに、この頃になるとターボラグという言葉は、ほとんど死語のようになっていたと言ってもいい。回転域を問わず、静かで、滑らかで、スムーズ。続いて乗った10年式の初代「パナメーラ・ターボ」のV型8気筒4.8リッターツインターボエンジンも、新型911ターボの3.8リッターツインターボエンジンも同様で、圧倒的なパワーを、ドライバビリティを犠牲にすることなく実現できるのが、今のターボチャージャー付きエンジンである。