「ただ一人、妻だけが私を“キモイ”と言わなかった」余命宣告された森永卓郎氏が身辺整理で見せた妻への愛
ただ一人、妻だけがキモイとは言わなかった
妻と距離を置こうと思ったのは、もう一つ理由がある。 私がメディアの世界で一番仲良くしている倉田真由美さんのご主人が、2024年2月に膵臓がんで亡くなった。 くらたまさんは情が深いという点が妻とよく似ている。そのくらたまさんが「夫の使っていた座椅子がどうしても捨てられない。思い出があるから」とネットに書いていた。 彼女の思いは痛いほどわかるのだが、そうしているといつまでも独り立ちができなくなる。 そこで私が死んだあと、妻が一日も早く一人で生きていける状況を作っておかないといけないと思ったのだ。それが私の妻に対する身辺整理だと考えたのだ。 だから私は妻に嫌われようと思った。そうすれば、妻はすぐに立ち直れる。 ただ、正直言って、この身辺整理は、まったくうまく行っていない。 これまでの人生で、私はほぼすべての女性から「キモイ」と言われ続けた。 ただ一人、妻だけがキモイとは言わなかった。 そんな唯一の存在を冷淡に扱うことは、なかなかできないというのが、残念ながら、私が抱える限界なのだ。 写真/shutterstock
---------- 森永卓郎(もりなが たくろう) 1957年、東京都生まれ。東京大学経済学部卒業。経済企画庁総合計画局、三井情報開発(株)総合研究所、(株)UFJ総合研究所を経て、獨協大学経済学部教授。専門は労働経済学と計量経済学。堅苦しい経済学をわかりやすい語り口で説くことに定評があり、執筆活動のほかにテレビ・ラジオでも活躍中。2023年12月、ステージ4のがん告知を受ける。 ----------
森永卓郎