年々早まる「ラン活」、新素材による多様化、6年間の思い出が「呪い」にも――令和のランドセル事情 #令和の親
「それだけ丈夫なランドセルには、子どもたちを守るという安全面でのメリットがたくさんあります。子どもの体重を支えられる強度がありますから、ヘルメット代わりになるなど、災害時にも役立ちます。ランドセルがあったおかげで交通事故に巻き込まれても大事に至らなかったという話がたくさん寄せられていますし、背面にウレタンを仕込んだタイプはビート板がわりになって水にも浮くので、水害のときにも命を守ってくれます」 ほかにも、車のライトに照らされて光る反射板、強い力で引かれた際にはあえて外れる仕様のフックなど、ランドセルにはたくさんの工夫が施されている。 「送迎が基本の諸外国とは異なり、日本は子どもたちだけで登下校をしますよね。ランドセル姿そのものが、車のスピードを緩めるなど、大人に『気をつけよう』という意識を喚起させます。少子化については、やはり業界としても非常に危機感を持っていますが、経済的な面だけではなく、文化そのものを大切にしたいと考えています」 国内での普及活動を続ける一方、ランドセル工業会が注目しているのが、インバウンドに向けたアプローチだ。近年、「日本のお土産」としてランドセルが売れているという。 「やっぱりアニメの影響ですね。のび太君、コナン君、ちびまる子ちゃん、日本の小学生が背負っているあの箱形のバッグが欲しい、という外国人観光客はとても多いです。自分用に買う人もいますね。今は肩ベルトがスライドして、身長175cmまで対応しているランドセルが一般的。数万円するものも『安い』と言って買っていかれます。工業会としても、世界中の方々にランドセルの良さを知ってもらうチャンスだと考えています」
ラン活の先に、「ランドセル終い」がある
「ラン活」して購入したランドセルも、6年が経つと必ず別れがやってくる。 愛知県名古屋市郊外に暮らす浅井祐子さん(仮名)は、男児3人の母親。今年の3月、三男が小学校を卒業した。 「季節用品などを入れている場所に、もう使わなくなったランドセルが3つ……。場所を取るし、でもなんとなく捨てられず。みんなどうしているんだろうと思ってママ友に聞いてみたんですけど、みんな『まだある』と言ってます(笑)」 どう処分するか、これは意外と悩ましい。卒業式の後すぐに捨てるという家庭は少なく、実際は何年間もタンスの肥やしになりがち。中には「いまだに自分のランドセルが実家の納戸にある」という親世代もいる。 「思い出がある、愛着が強いものは、時間が経てば経つほど処分できなくなるものです。だから『ランドセル終い』は難しい」