年々早まる「ラン活」、新素材による多様化、6年間の思い出が「呪い」にも――令和のランドセル事情 #令和の親
ここ数年、ニトリなど、意外なメーカーがランドセル業界に参入して話題になっているが、なかでも特に注目を集めたのが異素材で作るランドセルだ。アウトドアブランドのモンベルはナイロン製の通学用バックパックを、子ども服のファミリアは、本体はナイロン製、ふた部分に人工皮革を採用したハイブリッド型を打ち出した。さらに今年6月から、作業服で知られるワークマンも、「スチューデントデイパック」を販売。バリスティックナイロンという生地を採用しているが、この素材は防弾チョッキにも使われるほどの強い強度と耐久性があるという。 「高価格帯の革製ランドセルが一般的ななか、税込みで8800円と、かなり抑えた価格となっています。使用方法にもよりますが、かなり高い耐久性がありますので、長くお使いいただけますし、予備として、また紛失など万一のときは買い替えもしやすいかと。初めての試みということで、今年は1000個程度の販売を目標にしています」(ワークマン広報部 松重尚志さん) 1500gと意外と重量はあるが、背中にアルミプレートが入っていて重量を感じにくい設計になっているという。見本の陳列はせず、公式オンラインストアで受注、店舗で受け取り・購入というスタイルでの販売。検討している人から、製品の仕様について多くの問い合わせが寄せられ、すでに販売は好調だ。何よりもその安さは、これまでのランドセルのイメージ、価値観に一石を投じる存在だといえるだろう。
丈夫なランドセルには、子どもたちを守るというメリットが
そもそも、公立小学校において、ランドセルの使用が義務づけられているわけではない。基本的に通学かばんは自由だ。加速度的に少子化が進む中、ナイロン製など新しい通学かばんの台頭は、今後ランドセルの文化を衰退させるのでは……とも想像される。業界は、どう捉えているのだろうか。 一般社団法人 日本かばん協会に属し、日本製ランドセルの啓蒙活動を行う「ランドセル工業会」。同会では認定する国産のランドセルに6年間の無償修理を保証する認定証を発行している。 会長を務める村瀬鞄行の林州代さんはこう話す。 「工業会で認定しているランドセルは、軽い素材を開発しながら縫製、補強などに力を入れ、6年間の使用に耐えるものです。教科書協会にリサーチし、文科省と意見交換をするなど、子どもたちがランドセルに入れる内容についても把握して、アップデートを続けてきました。確かに最近は異素材のランドセルも話題ですが、選択肢が増えれば、それだけ『ランドセル』そのものへの注目度も上がりますから、それはそれでいいことだと考えています。箱形のランドセルが通学かばんとして定着しているのは、世界でも日本だけ。異素材のランドセルも、この形を踏襲するのは、やはり良さがあるからだと思います」 ランドセル工業会では、リュックとランドセル、それぞれにタブレットを入れて、130cm(子どもが背負った際の高さ)から地面に落とすという実験を行った。3回目で、リュックに入れたタブレットは割れたが、ランドセルでは割れなかったという。