川勝平太・静岡県知事に聞く(全文2)東京は蟻地獄「ポスト東京時代」を発信
静岡県内の人口の現状を分析するため、有識者会議を設置
── 実際、そういう希望を持っているのに、なかなかそれが実現できない。では、そこを施策で補っていくのですか。 そうですね。日本は1億2000万強、いるわけですけれども、静岡は370万。そのためには、現状を分析しないといけないですよね。やっぱり沖縄県と静岡県、あるいは沖縄県と北海道では、全然、生活の仕方も違います。 ですから、現状を正確に分析することが必要。そのためには、日本のことをよく知り、他の地域のことも踏まえた上で分析できるような最高の学者を招かなくてはならない。ということで、私がかねてより尊敬している鬼頭宏先生、おつき合いは、20代からですからね、今68歳ですから、もう数十年に及んでいる。本当に尊敬しています。その方に、まずは、委員会を立ち上げていただき、仕切っていただく。そして、こちらに招いて、生活の基盤を移していただいた。上智大の先生でしたが、今は静岡県にお住まい。静岡県の住民ですよ。 そういうことで、これまでの友情が実を結び、先生に分析していただく。そうすると人口というのは、自然減の面と社会減の面がある、と、分析してくださる。出生率がどうなっているか、死亡率がどうなっているか、それから地域から転出する人、転入する人、こうしたところを、人口論をよくご存じですから、カテゴリーを挙げて、それに応じた形で分析されるわけですよ。 現実がわかっていると何をしなくちゃいけないかがわかる。ここにきれいなお花があって、それを知らないで踏みつけるということはしません。知らなければ踏みつけるかもしれないけれども、知っていれば、そこを避けたりするでしょう。ですから、現状をしっかり分析すると、おのずと何をするべきかがわかるということなんです。鬼頭先生を座長に、いろんな方に入っていただいてまとめる、ということをしたわけです。
海辺に多い人口流出 地域で社会増減の理由が異なる
── それが静岡県の「人口減少問題に関する有識者会議」で、その後、分析をもとにつくったのが「長期人口ビジョン」ですか。 そうです。つまり、少年少女・青年たちが理想は持っている。現状はどうなっているか、分析をしなくちゃいけないということですよね。そして、転出が多い理由も、地域によって違いますよ。あと4日後に3.11の6周年がきます(※取材は3月7日)。静岡県は、東海地震、東南海地震、南海地震3連動、あるいは南海トラフの巨大地震、1978年くらいからそういう説が出ましたので、実質1979年、昭和54年から、東海地震は起こり得るという想定のもとに、2兆数千億円もの予算を順次投じて、耐震あるいは津波対策をしてきたわけですね。 にもかかわらず、東日本大震災で、2万人もの多くの方が命を失われたり、行方不明になったのは大ショックで。東海地震で想定されるよりもっと高い津波として、津波はどこにくるでしょう。海岸ですよね。本県には35の市町があるのですけれども、そのうち海岸に21の市町が面しているんです。その中で、人口が多いところは、静岡市の清水、昔の清水市ですね。 沼津市あるいは焼津市は、気がついたら、アパートをこちらから内陸の方に移します、と。沼津の人は、中泉という少し上の方に移します、と。焼津の人は、内陸側に藤枝という町があるんですけれども、そちらの方に引っ越したり。そういうふうに、(人の移動を)押しとどめられないですね。 【メモ】 ・静岡県の地震・津波対策……昭和50年代の東海地震対策から始まり、1979(昭和54)年度~2015(平成27)年度までに2兆2789億円を費やし、耐震や津波対策施設の整備などを進めている。