麒麟・田村さん「娘にひどいことを言ってしまった」授業参観で言ってはいけないこと放ち大後悔…「子育ては本当に難しい」
2007年『ホームレス中学生』で話題になった麒麟の田村裕さん。あれから17年、45歳の現在は三児の父となりました。 【画像】田村さん一家の七五三 子育てと夫婦、そして仕事について「エッセイ」という形で綴った『ホームレスパパ、格差を乗り越える 何も変わらなかったから考え方を変えた』(KADOKAWA)を上梓した田村さんに、お話を聞きました。 ■「奥さんは驚くほどドライ」 ーー著書では、田村さん自身がこれまでやってきた子育て、夫婦のコミュニケーション、仕事について、赤裸々に明かしていますね。 田村裕さん(以下、田村) 子育ての一番難しいところは「どの段階で成功かジャッジするねん」ということかなと思います。答え合わせなんてできないですよね。成長とともに日々状況も変わっていくし、今回、自分でも書きながら「……っていうけど、できへんこともあるよなあ」と何度も思いました。なので、「いい子育てしましょう」というよりは、「親子一緒に育ちましょう」というところを伝えたいですね。 ーー最近ではパパとして家族の話をする芸人さんもすごく増えましたよね。楽屋でもそういうお話はされるんですか? 田村 芸人同士で子育ての話、もちろんしますよ。家も近かったら子ども同士仲良くなって家族で遊ぶこともありますしね。こないだも、フットボールアワーの後藤輝基さんの家にハライチ澤部佑さんの一家と遊びに行かせてもらって、みんなでワイワイしたり。 僕、自宅は大阪なんですけど、東京にも一応「単身赴任部屋」があるんですね。4~5年前かな、家族が「ディズニー行きたい」と上京したとき、その部屋に泊まるだろうと考えてたら、奥さんが「(野性爆弾の)ロッシーさんち泊めてもらうことになったわ」って。こっちはめっちゃ掃除して布団用意せなあかん、ってしてたのに(笑)。 ーー家族ぐるみで仲良しなんですね。著書では夫婦関係についても多くページを割かれています。2011年7月に「七夕婚」をした奥さまは、どんな女性ですか。 田村 驚くほどドライな人ですね。僕、奥さんだけじゃなくてすべての女性に言っておきたいことがあるんですけど……旦那から電話かかってきたときに、ようあんな嫌そうに電話出れるね? これ絶対書いておいてください。 ーーそんなにですか?(笑) 田村 えぐいっすよ、ほんまに。いつ何時でもかけてくれるな、ってことなんかな? 奥さんも忙しいのはわかるし、やっと休憩したタイミングで何でかけてくんねん、って思うのはわかるけど、「人間と人間のコミュニケーションとしてあそこまで嫌そうにされたら必要なことまで言えなくなる」って僕も言いました。そしたら「わかった」って今、がんばってくれてますけど(苦笑)。 ーーがんばってくれてるんですね。 田村 そのわりに夫婦のコミュニケーション自体はあって、子どもたちが寝たあとに夫婦でおしゃべりする時間なんかはすごく楽しそうなんですよ。だから僕がめっちゃ嫌われてるわけじゃない、電話でそのときしていることを中断されるのが嫌なだけ、何かを邪魔されるのが嫌だってことらしいです。 ーー夫婦の章で、特に男性に向けて「プレゼントは喜ぶもの以外買うな」「自己満足に気を付けて」と書いてくれているのは、女性側から見て「よくぞ言ってくれた!」と膝を打つ内容でした。 田村 そうですか? いやほんとに、奥さんが厳しくて「ほんまにいらんもん買ってきてほしくないんやけど」と淡々と言われたもんですから(苦笑)。これまでで一番、落差があったのは、結構な有名ブランドのダウンジャケットをプレゼントしたときですね。 「これかわいいなあと、これ着てる人好きやなあ、着てほしいなあ」と思って買っていったんですよ。めっちゃ着てくれると思ったけど、全然着てくれなくて……「最悪コンビニ行くときでもいいから使ってほしいな」と言ってもダメだった。ほしくないものをもらっても、人は喜ばないんだなと痛感しました。 あと男性で、「奥さんに対してこれをやってあげているから自分は大丈夫」とか「誕生日にこれあげてるから」「朝の保育園の送りだけはどんなに寝てなくても行ってるから」なんて、自分の中で勝手にルールを作ってる人、多いんですよ。これは絶対ダメですね。相手がしてほしいことと全然かみ合ってないと、何のプラスにもならないです。 ■家族会議を習慣にしたら、子どもたちが変わってきた ーー田村さんはとても子煩悩なパパという印象です。おうちではどんな感じなんですか? 田村 こんな本を出しましたけど、地方ロケなんかで2~3日家に帰れないこともあるので、全然えらそうなことは言えないんですよ。でも家にいるときは、やることをちゃんとやろうと思ってます。 うちでは「パパはみんなの話を聞く係」になっていて。子どもは10歳・8歳の女の子と4歳の男の子なんですが、奥さんは忙しいから子どもたちが「聞いてよー」と話しかけてもあんまり聞けない。だから僕が帰ると全員「パパ聞いて聞いて」とめちゃくちゃ喋ってきますね。そこに奥さんも加わって全員が言いたいことバーッて言うんで、混乱してわけがわからなくなるときもあります(笑)。 ーーめちゃくちゃ人気者ですね! 田村 僕、もともと子ども好きなんですよ。「芸人よりベビーシッターやったほうがいい」って言われたこともあるんです(笑)。 というのも昔、ある番組で「男性ホルモンの量をはかる」という企画をやりまして。相方の川島は「通常の倍ある」と測定されたんです。川島は運動神経が悪いので全然運動をしてこなかったけれど、「もし何かやっていたら、人よりも筋肉がつきやすいのですごい肉体になっていたでしょうね」と言われてました。 一方の僕はなんと真逆で「通常の半分しかない」という驚きの結果でした。どうも番組の説明によると、「結婚すると男性ホルモンの量が減って子育てモードに入る」という説があるそうなんですが、僕は当時まだ結婚もしてないのに人の半分しかない。「もう子育てモードに入ってますね。芸人やめてベビーシッターやったほうがいいですよ」と言われました。 ーー著書では、貼り紙を効果的に使うことで叱る回数が激減したり、ほめまくるポジティブな子育てだったりと、試行錯誤を重ねながら子育てしていることが明かされていますが、お子さんに対して「これは言わなければ/やらなければよかった」と後悔することもありますか? 田村 いやもう、失敗だらけすぎて! そもそも怒らんでいいことのほうがはるかに多かったなと今になって思ってます。「ほら、ごはん早く食べ!」とか注意する必要なかったですし、「そんなん言うなら、もう連れて行かんよ!」と脅すようなことを言ってしまったのもダメでしたね。 脅しは本当に良くなくて、長女と次女が弟に向かって「ほんなら●●くんだけ連れて行かんで」と言ったことがあるんです。自分のせいやと思って、泣きそうになりました。それからやめました。こんな本書いてますけど、子育てって本当に難しいです。 田村 もうひとつ最近のエピソードで、長女の授業参観で失敗しました。算数の授業だったんですが、娘がめっちゃ簡単な問題に対してずっと「わからへん」とか言って、取り組もうという態度が全然見えなくて……その授業終わりで「ほな学校やめて働こか」と言ってしまったんですね。みんなの前でいきなりそんなことを言われた娘は大泣きしました。その次の授業は道徳でしたが、親子とも先生の話が耳に入ってこなかったです。 僕は別に勉強に重きを置いてないし、学校がしんどかったら行かなくてもいい、自分の人生をよくすることに時間を使えばいいと思ってるんですけど、やる気の見えない態度についイライラしてしまって、娘にひどいことを言ってしまった。しかも授業参観というみんなのいる場面で。奥さんにも「あれはよくない」と怒られました。 ただそんな長女が一番、僕に似ているんです。あまりにそっくりなので、「こんなふうになるなよ」という思いから、あれこれ口を出したくなってしまうのかもしれません。 ーーどんなところが「自分に似ているなあ」と感じますか? 田村 何もかも僕すぎてやばいですね。特に考え方の頑固さ。「小学校のとき、僕もこれ言うてたなあ」みたいなことが、しょっちゅうある。まんまです。苦労するでえ、って思う。自分が納得するまでイエスと言えないんですよ。 ただ、子どもたちは驚くようなスピードで成長しているなとも思いますね。我が家ではしょっちゅう家族会議をしていて、特に長女・次女・僕でよく話し合いしています。 以前、お姉ちゃんが怒りをコントロールできひんくなって暴れていたときに、妹に「お姉ちゃん見てみ。怒ってるときって、人はあんな感じやで。どう思う?」と言うと「結構きついな」と。そして逆に妹がキレているとき、長女と「こないだのお姉ちゃん、あんなやったで」「マジ?」なんて話して。 その後、姉妹と僕とで車に乗っていたとき「あれ恥ずかしいからやめるわ」「そやんな。私も」と話し合っていて、二人ともメキメキ変わってきました。ああやって怒りを発散することに意味はないんやなと気づき出して、癇癪がかなり減りましたね。 ーー客観的な視点を持てたんですね! 田村 おまけに、それまできょうだいゲンカばっかりだったのが、意識しはじめたら長女と次女がすごく仲良くなったんです。次女も弟とケンカしてしまうことがありましたが、「あんなふうに怒るのいやや」と思うようになったみたいで、弟と衝突したら「いやちょっと待って、落ち着くわ」と自ら距離を置いてクールダウンするようになりました。ああ、家族会議の習慣が実を結んできたのかなあと思えるようになっています。 ■「やめない」という才能 ーー麒麟は今年で結成25年目を迎えました。現在の活動について教えてください。 田村 一番の願いは、先輩たちがいなくなって仕事がまわってくるといいなあと思ってますけど(笑)、芸人である以上、やっぱり芸をやっていきたいですね。今でもコンビでの漫才は毎月、プラス何ヶ月かに一回のトークライブもやっていますが、実は一年に一回ピンネタライブをやってるんですよ。 もともとネタを書いてきた人間じゃないので芸歴とネタ歴が比例しなくて、若手のつもりで作家さんの力も借りながら、ああでもないこうでもないと頭をひねってやってるんですけど。まだ今はお客さんも70人規模ですが、ゆくゆくはNGKでゲストなしのピンネタで1時間~1時間半やりきれるようになっていきたいですね。 ーー目標としている舞台はありますか。 田村 カンニング竹山さんの単独ライブが、めちゃくちゃ面白いんですよ。一年に一度、3~4日間だけやっているライブで、僕は毎年見に行っています。竹山さんは一年間かけて何かひとつやってくるんです。たとえば「毎日誰かに1万円渡す。一年間で365万円を人にあげる」なんてことを実行していて。 僕はあまりにもそれが好きすぎて、直接「真似させてください」とお願いして許可をもらったんです。それで今年の9月から、ボイトレに通っています。 ーーボイトレですか?? 田村 もともと歌の仕事はコンビでNGにしてるくらい苦手なんです。だからあえて挑戦しようと思って、2025年9月のピンネタライブに向けて、ボイトレを一年間続けることにしました。苦手なことなのでもうすでに億劫なんですけど、一年かけてどれだけ変わるのか。やってみるしかないですね! ーーチャレンジですね。 田村 僕、ロッシーさんとサバンナの八木さんと「じゃない方BIG3」(StandFMにて毎週木曜21:00よりラジオ配信中)というユニットもやってるんですが、そこで「芸人もやめないのが才能やな」という話になって。世の中にはいろんな才能があるけど、やめへんって才能がまず最強やなと。これって芸人だけじゃなく何事にも通じることだと思います。 もちろんモチベーションの上下はあっても、スパッと切らずに距離を置きつつ続けたり、細くてもいいから続けるっていうのは人生のプラスになる。僕自身がそうで、芸人だけじゃなく、バスケットボールをやめずにずっと続けたことは今につながっているし、ファッションもすごい好きなんですけど、縁があって今ブランドをやらせてもらってる。在庫抱えなあかんしんどさとかいろいろあるけど、楽しいっすね。ずーっと好きなことがやれてる。「やめない才能」大事にしたいです。 麒麟 田村裕さん/芸人 1979年生まれ。大阪府出身。1999年、川島明さんと共にお笑いコンビ・麒麟を結成。2001年に『第1回M-1グランプリ』で決勝に進出し、2003年から2007年まで『M-1グランプリ』決勝戦に連続出場。2007年、自伝的小説『ホームレス中学生』(ワニブックス)がミリオンセラーに。現在は麒麟としてバラエティ番組などに出演するほか、俳優としても幅広く活躍。芸能界を代表するバスケ通で、関西を中心にバスケットボール教室をプロデュースしている。2011年に一般女性と結婚、10歳と8歳の女の子、4歳の男の子のパパ。 (写真:本人提供 取材・文:マイナビ子育て編集部)