専門家が現地調査「地震と豪雨」能登半島ダブルパンチの深刻さ 今後警戒すべき点とは?
また、低地をとりまくように、土砂災害ハザードマップにおける土砂災害警戒区域が広がっている。低地の周囲には山地が広がっており、急傾斜地の崩壊(がけ崩れ)、土石流、地すべりの警戒区域が広がる。地域のほとんどが、川沿いの低地か、傾斜地で土砂災害リスクのある山地の、いずれかであるという特性だ。 現地で調査を実施して、浸水・冠水があった地点6カ所を上図に示した。洪水ハザードマップ、土砂災害ハザードマップも重ね合わせている。
紫色の点線で囲ってみると、洪水ハザードマップで浸水が想定されている区域に多くが含まれる。しかし、著者が確認できた範囲では、河原田川またはその支流の鳳至川の氾濫で被害があった地域は①、②のみであった。 これらの地域では河川の洪水・氾濫が発生し深さ1.5mを超すような浸水と、川が運んで来た多くの土砂が街中に運ばれていた。 特に①では人口が密集する地域と一致してしまったことから、その浸水の深さと土砂による被害が著しかった。
市役所東側にある河原田川の上新橋では、2本ある橋脚の西側が大量の流木で閉塞されていた。こうした流木も、上流側の斜面崩落、土砂堆積によってより流れ出しやすかったと考えられる。 閉塞があると、川の流れは閉塞部分から左右に迂回して増水し、より氾濫しやすくなったことも想定される。 ■洪水ハザードマップの想定外が起きた 一方、輪島市街地のそれ以外の地域では、洪水ハザードマップが作られていた川の氾濫ではなく、それぞれの集落を流れる川、または少し離れた山側にある川の氾濫、または山側から土砂と水が流れてきたとみられるケースが目立った。
上図で番号③、④の2カ所が仮設住宅の床上浸水が発生していた地域である。③では地域の南西側にある小さな川が氾濫して流れ下り、下流側(北/地図の上側)に流れていくことで仮設住宅に被害をもたらしていた。④も裏手の小さな川の氾濫によるものだ。 図の⑥付近は「道の駅輪島」付近で、東方の山側の2カ所から、多量の濁水が流下されている状況が、9月21日のX(旧Twitter)で動画がアップされていた。 実際に現地を見ると、水は引いていたが、家の玄関先や車、自転車等が流れて来た土砂に埋まってしまっていた。この地点は谷筋にあるが、日ごろから流れている河川の氾濫というより、谷を登った上部にある輪島中学校のグラウンドからの土砂流出であった。