日本の住宅、夏は暑くて冬は寒い! 断熱が絶大な効果をもたらすって本当?
高橋:最後は日射のコントロールです。冬はできるだけ太陽の熱を窓から取り入れ、夏は逆に直射日光をできるだけ入れないように庇(ひさし)などを作って遮熱対策をします。すだれやオーニングなども効果的です。遮熱は窓の外側でするのが効果的だと覚えておいてください。
――新築の住宅で断熱性能を高めたい場合、一般的な住宅と比べて、どのくらいの建築コストがかかるのでしょうか? 高橋:断熱のレベルにもよりますが、大体1割から2割増しになるといわれています。2,000万円の家を建てると、約200万円から400万円プラスになる計算です。 そう言われれば躊躇してしまうかもしれません。しかし、最初に多少お金をかけて断熱した方が、光熱費などのランニングコストがおさえられるので、長い目で見れば経済的にも得をします。また、カビが生えづらいので家を長く維持することが可能です。将来のお金が不安な人ほど、断熱性能の高い家に住むべきだと思います。 ――すでに建築済みの既存の住宅や賃貸住宅にもできる、断熱の方法はあるのでしょうか? 高橋:断熱のリフォームで一般的なのは、窓の内側にもう1つ窓をつける「内窓」ですね。そこまで高額にはならないリフォームですし、2024年8月現在、国は住宅省エネ2024キャンペーンと称して補助金も出しています。 賃貸の場合は、リフォームと比べるとレベルは落ちますが、両面テープで貼れるような簡易内窓があります。あとは100円均一で売っている隙間テープで窓やドアの隙間を埋めることも、何もしないよりは断熱の効果が上がります。
効果を体感し、断熱を社会に推し進めていく
――省エネや気候変動対策として断熱を促進していくために、一人一人ができることを教えてください。 高橋:一人一人が暑さ、寒さ、そして省エネに対する概念自体を変えるべきだと思います。日本では省エネといえば「我慢をする」というのが当たり前になってしまっていますが、それで得られるものは多くないですし、むしろ健康被害を生みかねません。 ヨーロッパでは過度な暑さや寒さは人権侵害だと捉えられているくらいです。断熱を体験できる施設も住宅メーカーのモデルハウスや窓メーカーのショールームなど各地にありますので、その効果をぜひ体感してもらって、一人でも多くの方に取り入れてもらいたいと思います。 また、今回は住宅の話が中心でしたが、ビルや公共施設など大型の建物は、さらに多くのエネルギーロスを起こしているのが現状です。断熱はとても地味な存在ですが、社会を変える可能性を秘めています。多くの人がその重要性を認識して、社会全体で断熱をしようと声を上げていくことで、脱炭素という大きな目標の達成にも近づくのではないかと思います。
編集後記
家選びの際、広さや日当たりは気にしますが、断熱性能は気にしたことがありませんでした。断熱という概念なくして、本当の意味での省エネも、私たちのQOL向上も実現はできないと感じる取材となりました。 ハウスメーカーなどでは断熱性能を体験できる内窓やサッシなどの展示やショールームを積極的に行っているそうです。まずはその効果を実感し、身近に取り入れられる断熱を始めてみたいと思います。
日本財団ジャーナル編集部