日産・ホンダの統合騒動だけにあらず 激動の2024年を時事問題で振り返る
業界全体で行われていた認証不正
2024年もそろそろ終わりに近づいて、今年のクルマ重大ニュースは……などと編集部と話していると、最後の最後に特大ニュースが世界を駆けめぐった。いうまでもなく、「日産とホンダが経営統合?」のスクープである。 【写真】新型「プレリュード」の姿も! 将来のためにホンダが磨いている次世代技術を写真とともにチェック(13枚) それを受けて、年末も押しせまった12月23日に、日産自動車とホンダ、さらに日産と資本関係にある三菱自動車の3社長が、顔をそろえての記者会見を開催。日産とホンダによる「経営統合に向けた検討に関する基本合意書」および、そこに三菱を加えた「3社協業形態の検討に関する覚書」の締結を発表した。 そういえば、ちょうど1年前も大騒ぎだったような記憶が……と、あらためて振り返ってみたら、昨2023年の年末にもクルマ業界に激震が走っていた。すでにご承知の向きも多いように、ダイハツの認証不正問題である。 この問題を引きずったまま年を越した2024年の前半、認証にまつわる国内全メーカーの総点検が行われた結果、トヨタ、ホンダ、スズキ、マツダ、そして二輪のヤマハにも不正があったことが公表された。その詳細はここでは繰り返さないが、厳格に定められた型式指定の認証試験をごまかした行為は許されることではない。それ相応の処分はあって当然だろう。 そんな認証不正問題も、2024年7月にダイハツが宣伝活動を再開、最後まで出荷停止指示が続いていたトヨタも9月2日にすべての生産を再開したことで、健全化への一応のメドがついた。それにしても、不正はあったが、その不正が行われたクルマの安全性や品質に現実の問題があったかといえば、そうでもない。その意味ではひと安心しつつも、一連の認証不正問題については、なんだかモヤモヤした気分のまま終わった感もなくはない。
営業利益9割減という衝撃
それに続いて、2024年のクルマ業界スズメたちの井戸端会議の中心となったのが、型式指定の認証については「不正なし」と胸を張った日産、そして三菱である。 発端は11月7日に発表された日産の2024年度上半期の決算だ。それによると、いわゆる本業でのもうけを示す営業利益が、前年同期の3367億円から329億円にまで激減した。金額にして3038億円、率にすると90.2%という巨額マイナスである。と同時に、日産の内田 誠社長兼CEOは、9000人(日産のグローバル正規雇用従業員の1割弱!)の人員減、世界生産能力の20%削減、そしてアライアンス関係にある三菱自動車の持ち株34%のうち10%を売却といったリストラ策を公表した。 今回の要因は、日産が生命線としてきた中国と北米という世界の2大市場での不振とされた。まあ、今の中国では外国メーカーはほぼ例外なく苦戦させられているが、日産は日本勢では中国でもっとも成功していたメーカーだったこともあり、その反動がとくに大きい。 いっぽうの北米市場では、現行モデルの大半が長寿化してしまっているなかで、頼みの綱であった「ローグ(日本名:エクストレイル)」のまさかの販売不振が効いた。そのローグがもうからない最大原因は、トヨタやホンダとちがってハイブリッドがないから………というのが、経済メディア筋の見立てだ。なるほど短期的には、それは間違っていないだろう。 しかし、日産も手をこまねいていたわけではない。まず、北米ではこの2025年モデルから「キックス」と「ムラーノ」という、ローグの上下を固めるSUVが同時にフルモデルチェンジされる。これで、北米での売れ筋となるSUVの大・中・小モデルが、すべて新世代でそろうことになる。 また、日産の北米ラインナップに現在ハイブリッドがないことをとらえて「日産独自のハイブリッドである『e-POWER』はガラパゴス技術で、北米では通用しない」と断定的に伝える経済メディアも少なくない。なるほど、e-POWERは高速燃費を比較的苦手とするのはたしかだが、北米市場でウケるかどうかは、やってみなければわからない。日産も遅ればせながら、2026年後半以降、e-POWERを(おそらくローグから)北米市場に投入する計画も明らかにしている。 あえて日産の味方をさせていただければ、北米市場を立て直すための方向性は見えていた。ただ、すべてのタイミングがちょっと遅かっただけなのだ。