日産・ホンダの統合騒動だけにあらず 激動の2024年を時事問題で振り返る
これもゴーン時代の“負の遺産”なのか
日産といえば、あのカルロス・ゴーンCEO(当時)が2002年に打ち出した「日産180」のもとで、わずか数年の間に膨大な数の新型車を一気に発売した。それが現在にも響いており、日産の新車発売スケジュールはいまだに波が大きい。そう考えると、今回の不振も、中国市場の変化、コロナ明けの供給過多、電気自動車(BEV)政策の反動によるハイブリッド人気……が、日産の新型車が出てこない谷の時期にちょうど重なってしまった不運も大きいと思われる。 さらにいうと、ゴーン時代の日産は利益率をことさら重視する経営だったこともあり、新ジャンルや新技術などのチャレンジングな商品企画が通りにくい雰囲気だったともいわれる。せっかくのe-POWERの北米市場投入がこれまで実現してこなかったのも、それが理由かもしれない。
これまでと同じ仕事の仕方でいいの?
今の日産も、ぎりぎりではあるが赤字に転落したわけではないし、内部留保もそれなりにある。今日明日にも破綻の危機というわけではないはずなのに、こうしてホンダとの統合話がいきなり出てきた背景には、世界最大の電子機器受託メーカーといわれる台湾の鴻海精密工業(ホンハイ)が、日産を買収しようとしたから……とささやかれる。日産ほどの企業ともなれば、当然ながら経済産業省≒日本政府が動いたとしても不思議はない。しかも、ホンハイ側のBEV事業最高戦略責任者が、2019年に日産社長の座を内田 誠氏と争って敗れた因縁の関潤氏……ともなれば、ウワサがウワサを呼ぶ展開になるのも、むべなるかな。 ただし、12月23日の会見を見るかぎり、現段階では「日産とホンダの経営統合、そこに三菱も絡むのかどうか……についての話し合いを、これからはじめる」ということに合意したにすぎない。売上高や株価の時価総額では完全にホンダが優位だが、ホンダの三部敏宏社長は会見の場で「はっきり申し上げるのは(日産の)救済ではない」「ホンダと日産が自立した会社として成り立たなければ、経営統合は成就しない」と、あくまで日産の自力再建が大前提であることを念押しした。 さらに、「今回はまだ検討を開始する段階であり、経営統合を決定したわけではありません」とも発言。三部社長の言葉には、周囲が前のめりになりすぎないよう、慎重なものが多かった。現段階での正式な情報だけでは、ホンダ、日産、三菱がどうなっていくのかは、正直よくわからない。今回の騒動の具体像が見えてくるには、もう少し時間が必要だろう。 それにしても、2年連続、しかも年末に、あまりポジティブとはいいがたいビッグニュースが飛び込んでくるとは、自動車産業が“100年に一度の変革期”というのも、あながちウソではないのだと実感する。この“100年に~”とは、一般的にはBEVや自動運転をコアとする論説ではあるけれど、一見関係なさそうな認証不正問題もまた、「昔ながらのやりかたを続けていいのか?」と問いかけている意味では、根っこは同じ気もする。 (文=佐野弘宗/写真=本田技研工業、日産自動車/編集=堀田剛資)
佐野弘宗