外では「良いパパ」とほめられるのに…発達障害がある人が自宅では「まるで別人」になる深いワケ
「あの人」の特徴(1)…基本的に不安
これはもう、間違いなく知っておいてほしい「あの人」の特徴です。それにしても、なぜ「あの人」は不安なのでしょう。どんな不安を抱えているのでしょうか。「あの人」が抱えている不安というのは、いわば「この世界がよくわからない」っていう不安なのだと私は思います。 私たちは生活するなかで、自然と〈この世の中では××すると〇〇になる〉〈▲▲のときはこうすべき〉という予測を立てられるようになります。はっきり文章化されることはないけれど、確かに存在している“法則”のようなものがあるわけです。それを世の中では「常識」と呼んだりしますが、ときどき見失うことがあっても、なんとなく“法則”が理解できるようになるのです。 ところが「あの人」は見通しを立てるのが苦手で、だから文章化されない“常識”をつかめなかったりします。見通しを立てるのが苦手だから、明日、明後日、来年、あるいは将来、なにがどうなるか、うまく推測できない(あるいは、推測する必要を感じないので考えない)のです。だから他の人よりも大きな不安を抱えたまま生活している、そういうことが多いのです。
「あの人」の特徴(2)…他人の立場や気持ちに鈍い
たとえば見通せないと困るものの一つが、「人の気持ち」です。人の気持ちは見えないので、本当のところは言ってもらわないとわかりません。でも、表情や仕草をサインとして活用して〈今日は機嫌がよさそう〉とか、〈怒ってる〉と推測するわけです。 そういったサインと、サインから読みとれる気持ちは、わかる人には当たり前のようにわかりますが、わからない「あの人」にはわかりません。 わからないから「あの人」は、他者との接触のなかで目まぐるしく変化する嵐のような“何か”に翻弄されている、そんな落ち着かない状況に陥りやすく、だから余計に不安になります。その“何か”は「気持ち」「気分」と呼ばれるものなのですが、それがわかっても、やっぱり推し量ることへの苦手さは残ります。加えて、自分にはできないことが、周囲の人にはなぜかできていることがわかって、〈なぜそんなことがまかり通るのか〉といっそう不安になったりもします。 もちろん、発達障害の当事者といわれる方のなかにも、他人の気持ちに鈍くないという人はいますが、それでも見通しを立てにくい生活世界は、「あの人」にとっては不安要素があちこちに潜んでいる場所になります。不安を感じながらも、生きていくために〈なんとかうまくやろう〉とずっと緊張して過ごしているので、余計に疲れるのです。 そんな「あの人」が緊張を解いてリラックスするには、一人になるのが手っ取り早いわけで、だから心に身に付けた鎧を全部外して自分自身に立ち返る「自分だけの世界」──たとえば自分だけの部屋、自分だけの趣味──が、「あの人」には不可欠です。