チーム運営の原動力は、“競争”の美しさとファン目線での“ワクワク”。TGM Grand Prix池田代表の思いを探る|モタスポ就職白書
“競争”の美しさ
ここまでは池田代表の略歴を紹介したが、話を本題である業界の人材不足に移そう。当然業界としても、新たな人材の採用を行なっていないわけではない。しかしながら、その実情にギャップを感じて退職する者も一定数いる。これは本稿の冒頭でも述べた“情報不足”も一因と言えそうだが、池田代表は、特にエンジニアやメカニックといった技術職は“プレイヤー”的な要素が求められることにギャップを感じるケースが多いのではないかと語った。 このプレイヤー的要素は、以前本企画にご登場いただいたTEAM MUGENの小池智彦エンジニアも言及していた。彼曰く、レースエンジニアは自分の裁量で仕事を決められる点が「楽な点であり大変な点でもある」として、結果を残すにはスポーツ選手のように日頃から鍛錬を積むことが必要になると述べていた。 池田代表はこう語る。 「この業界に入る人たちは、レースの世界で働きたい、という憧れで入る人が多いです。ただ入ったものの、自分にはキツいと思って辞めていくパターンが昔からありますよね。今はどうか分かりませんが、大きくは変わっていないかもしれません」 「ではそういったギャップをどうやって埋めるか……事前に調べたり、インターンシップに参加する(※)などして確かめることも重要だと思います。ただ一般企業とは、少しだけ違うところがあると思っています」 ※セルブスジャパンでは11月にエンジニアを目指す学生向けのインターンシップを実施予定 「特に技術者はプレイヤーのような感じなんですよ。 野球選手やサッカー選手のように、技術を身に付けてそれをお金に変えていく仕事ですから、個々の能力がかなり問われます。そこにマニュアルがあって、それを言われた通りにこなせばいいとか、そういうことではないんですよね」 「だからこそ、入ってからもトレーニングや勉強が大事になってきますよね。それがレーシングチームで働くということだと思います。そういうことを入る前に知っているかどうか……その辺のギャップがあると思います」 モータースポーツはチームスポーツとはよく言ったものだが、競争しているのはレーシングドライバーだけではない。エンジニアもメカニックも、日々高め合い、己を磨く必要があるのだ。池田代表は、そういった“競争”の素晴らしさを若い世代に伝えたいという。 「レース屋としては、“競争”というのをテーマにやっています。相手と競って勝ちたいという競争心は常にみんなが持っていますし、競争心があるからこそ、新しい技術、価値観、文化だったりが出てきます。それがなければ発展もないと思います」 「でもそれは、“戦い”とは違うんですよね。戦いというと、人を蹴落とすようなイメージがありますが、相手をリスペクトしながら相手に負けないようにその上を行こうとする……それが競争だと思います」 「その世界観が素晴らしいから、レースをやっています。それをもっと若い人たちにも伝えたいなと思っていますし、それがTGM Grand Prixをやっている意味でもあります」
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