安倍氏に習え 石破首相、11月後半の訪米検討 「ショック」緩和できるか
米大統領選で共和党のトランプ前大統領が勝利したことで、石破茂首相は11月後半にも訪米し、トランプ氏と早期に面会することを検討している。中国や北朝鮮の軍事的動向が激しさを増す中、東アジア情勢の安定には引き続き米国の関与が不可欠。このため、トランプ氏との個人的な信頼関係構築を図る考えだ。 【写真まとめ】米大統領選、開票進む 首相は6日夜、トランプ氏の「勝利宣言」を受け、「トランプ氏の勝利に心からのお祝いを申し上げ、合衆国(米国)国民の民主主義の選択にも敬意を表したい」と述べた。そのうえで「今後、トランプ氏と連携を密にしながら、日米同盟、日米関係をさらなる高みに引き上げていきたい」と語った。首相官邸で記者団の質問に答えた。 首相はトランプ氏と早急に電話協議や対面での会談を行いたい考えで、記者団に「トランプ氏と接点を早急に持つべく努力をしていきたい」と語った。具体的な日時については「現在調整中で、まだ具体的にこの日ということは申し上げない」と述べるにとどめた。 岩屋毅外相は「米国の次期大統領と首相ができるだけ早く接点を持ってもらえるように外務省として努力したい」と述べた。同省で記者団に語った。 トランプ氏が大統領に就任するのは2025年1月だが、日本政府は就任前の早期に会談することが得策だと判断している。背景にあるのはトランプ氏と強い信頼関係を築いた安倍晋三元首相の「成功体験」だ。 安倍氏は16年11月にトランプ氏が大統領選で勝利すると、直後に米ニューヨークの居宅「トランプタワー」を訪問。トランプ氏の個人的な信頼を獲得した。民主党のオバマ大統領(当時)が政権末期とはいえ現職だった間に、ライバル政党・共和党のトランプ氏と会うことに外務省内では懸念の声もあった。外務省関係者は「安倍氏がリスクを取った結果が成功だった」と振り返る。 今回、日本政府側はトランプ氏と民主党のハリス副大統領の両陣営に対し、早期に訪米し、会談する意向があることを既に伝えている。首相は安倍氏と同様にトランプ氏と会談し、日米関係の安定が東アジア地域の平和と安定に貢献すると強調する見通しだ。外務省幹部は「新大統領と、10月に就任したばかりの首相は仕事を始めた時期が近くなる。個人的な信頼関係は構築しやすいはずだ」と期待する。 トランプ氏は自国製造業を保護するため、同盟国を含むすべての外国からの輸入品に関税を課す方針を明言するなど懸念材料も多い。それだけに日本側としては早期に首脳間の信頼関係を構築し、「トランプ・ショック」を和らげたい思惑もにじむ。 一方、首相の足かせとなるのが日本国内の不安定な政治情勢だ。首相は就任直後に衆院解散・総選挙に打って出たが、与党の自民、公明両党は過半数を割り込む大敗を喫した。首相は国民民主党と政策ごとに協議する「部分連合」に向けた調整を進めるが、政権基盤の弱さが外交力の低下につながるリスクに直面する。自民からは「外交を進めるような体制ではないことは明らかだ」との指摘も出ている。 首相が自民総裁選で掲げていた日米地位協定の改定などが、日米関係の不安定化を招きかねないとの指摘も根強い。外務省関係者は「トランプ氏が在日米軍の駐留経費の負担増を主張する恐れもある」、自民重鎮は「トランプ氏が『日本も応分の負担が必要だ』と主張し、日本がさらなる防衛費増額を求められる可能性もあり得る」とそれぞれ警戒感をあらわにした。【小田中大、園部仁史】