歴史的建造物の面影を残しつつ、現代的に。一人旅でゆったり訪れたい「京都市京セラ美術館」
1933(昭和8)年、「大礼記念京都美術館」として開館。第2次世界大戦をくぐり抜け、現存する国内最古の公立美術館建築として愛されてきた「京都市美術館」。 【画像】新旧が融合。「京都市京セラ美術館」の写真をまとめて見る 2020年春に新たな通称「京都市京セラ美術館」を得て生まれ変わり、新たなページを刻み始めました。そして同年8月には、本館の建物のほか正門など6カ所が国の有形文化財に。開館直後から気になっていた美術館でしたが、ようやく来訪が実現しました。
◆創建当時のデザインを活かしつつ、現代的な要素も兼ね備えた建物
「平安神宮」や「京都国立近代美術館」を有する左京区の岡崎公園内にあり、建築家・前田健二郎が手掛けた建物は、鉄骨鉄筋コンクリート2階建ての帝冠様式を代表する建築。 創建当時のデザインを最大限に活かしながら、2017(平成29)年から約3年をかけて建築家・青木淳氏と西澤徹夫氏の設計のもと大規模改修・増築工事が行われました。 神宮道からのタイル張りの景観と前広場は踏襲され、エントランスを地下に移し、新たに「ガラス・リボン」というガラス張りの空間を設置。エントランスの両脇に設けられたカフェとミュージアムショップは、チケットなしでも自由に利用できるようになりました。 意匠的価値が高いことから保存されている旧西玄関ロビーは、自由に見学できます。大理石の壁面や柱、天井の漆喰(しっくい)、玄関の床を覆う京都産美術タイルの最高峰と名高い「泰山タイル」のモザイクタイル、そしてステンドグラスの窓や照明器具。 創建から90年以上の年月を経てもなお、重厚感を保ち続ける空間に圧倒され、うっとりと見入ってしまいます。 大理石の壁や柱にはアンモナイトの化石を見つけることもできるそう。 チケットを購入したら大階段を上り、1階の中央ホールへ。白で統一されたホールは天井高16メートルある吹き抜け空間で、2階部分の窓から光が差し込む明るい空間。大階段脇の螺旋(らせん)階段を上ると、2階の廊下に出られます。 こちらの階段は見方によっては巻貝のようにも見え、開館当初はフォトスポットとして行列ができるほどの人気だったとか。 2階の西広間も京都市美術館から引き継がれた歴史的意匠が存分に楽しめる空間。床のモザイクタイル、大理石の壁面、ベランダや階段の手すりの意匠、照明器具など見どころが多い中、誰もが思わず息をのむのが、漆喰(しっくい)の格天井にはめ込まれた美しいステンドグラス。 社寺建築で目にする格天井の花の絵を思い起こさせ、カメラを向けずにはいられませんでした。