辞意の定番コメント「不徳の致すところ」 兵庫県知事の釈明に思う「徳のなさ」
■「漢文を廃止せよ」百田尚樹氏の暴論 神戸:作家の百田尚樹さんが2017年に「そもそもなぜ学校に漢文の授業があるのか。英語と違って使う機会なんてない」と批判し、「中国に対する漠然とした憧れを持つことはやめるべきだし、そんな勘違いを育む漢文の授業も廃止したらいい」と書いています。僕はあまり漢文をちゃんとは勉強していなかったけど「いや、それは暴論だろう」と思いました。漢字が伝わってからずっと日本人は、中国語の詩を読みそこにある思想を学んできた、2000年近い歴史があるわけです。実際に、日本人の心の中に深く入っています。例えば、この漢文の参考書にも、「五十歩百歩」「温故知新」「起承転結」…。 田畑:故事成語は中国から来ているのが多いですよね。 神戸:そうです。日本語の中に入っています。だから、日本人を理解するにはもうちょっと漢文を知った方がいいのじゃないか、と前から僕は思っていたので、こういう参考書を読みたくなったのです。 田畑:ましてや、幕末の維新の志士たちも、漢文を。 神戸:そう。みんな漢文で物を考えていた。それをもっと知りたい、と僕は思ったんです。 ■「天網恢恢疎にして漏らさず」 神戸:「天網恢恢(かいかい)疎にして漏らさず」という言葉を習いましたね。神が張った網は、ゆるいようだが、決して漏らすことはない。つまり、悪事を行えば、一時的には逃げおおせるけれど、結局はその報いを受けるということ。兵庫県知事を見ていて、ちょっとかじった漢文を思い出しました。県政は大停滞中。それは、あなたが進めさせていないからじゃないか。こんな状態では何も決められません。他の維新のリーダーたちの中にも、人を攻撃することは得意だけど守ることは苦手で、常に攻撃する対象を別のことに変えることで矛先をかわしてきた印象もありますが、さすがに今回そうはいかないかな、という感じがします。「天網恢恢疎にして漏らさず」だし、選挙を待つまでもなく、「私の不徳の致すところ」と言って辞任した方がいいんじゃないか、と私は思っています。 田畑:完全に、自分の引き際をもう見誤ってしまって…どこで引くのか。9月議会を待って不信任決議が出されてなのか、注目です。
■神戸金史(かんべ・かねぶみ) 1967年生まれ。毎日新聞入社直後に雲仙噴火災害に遭遇。福岡、東京の社会部で勤務した後、2005年にRKBに転職。ニュース報道やドキュメンタリー制作にあたってきた。やまゆり園事件やヘイトスピーチを題材に、ラジオ『SCRATCH差別と平成』(2019年)、テレビ『イントレランスの時代』(2020年)・『リリアンの揺りかご』(2024年)を制作した。
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