トランプが変える地球経済 Forbesが見た歴史的転換への道
悲観するのは早計だという見方も
そんな最悪なシナリオが描ける一方、悲観するのは早計だという見方もある。高インフレ化への懸念に対して、ソニーフィナンシャルグループ執行役員、尾河眞樹チーフアナリストは「インフレ傾向ではあるが、深刻な水準にはならない」と予想。「FRBの政策金利の最終着地点の見通しは、3.375%から3.625%に多少引き上げたが、足下の4.625%から利下げする方向であることに変わりはないだろう」また、「関税も毎年大幅に引き上げられるわけではない。輸入品の価格水準が上がったとしても、物価上昇率は前年比で計算されるため、影響は一時的ともとらえられる。移民政策についても、労働力が不足することは賃金インフレに繋がる一方で、人口が減り需要も減少するため、インフレ圧力は限定的という見解もある」(尾河)。 さらに、財務長官に指名されているスコット・ベッセントは、歳出を抑制する方向性を示していることから、尾河は「財政不安からドルが急落し、金利が急騰する『悪い金利上昇』の可能性も低くなってきた。トランプの政策のうち減税や規制緩和などのサプライサイド政策によってアメリカの景気が上向けば、関税の問題は残るが、日本のものをアメリカが買い、日本経済も上向く」と期待感を示す。日本円は「25年末は今の水準よりもやや円安の155円台で終わる」見通しだ。 物価高に対する不満、格差拡大への不満など、バイデン政権下で国民の怒りがたまっていた状況で、国民の生活を第一優先とする保護主義政策を掲げるトランプの再選は必然的だったとも考えられる。保護主義の極端な政策に対して不安な声も多いが、本当に恐ろしいのは、それが失敗に終わったときだ。政府不信がさらに深まり、国民の不満が増大。そして社会の分断が加速し、経済が停滞することで、不景気の波が世界中に広がる可能性も考えられる。 歴史の転換点に立つなかで、私たちはどうやって希望を見いだせばよいのか。経済だけではなく、あらゆる切り口で現在地を見つめることによって、浮かび上がる未来像があるのではないか。そこで、国内外の経済学者、政治学者、哲学者、投資家など6人の賢人にトランプがけん引する世界の行方を問うた。彼らの言葉から見えてくる希望とは。