「収入は10分の1」 40歳、年収1000万円の仕事を辞めた人の「本音」
今は子どもとの時間が優先事項だが、もしかしたら今後、両親のサポートが必要になるかもしれない。夫婦での時間が今より必要になるかもしれない。自分自身へのケアが必要になるかもしれない。だからこそ、「家族の時間をつくるための余白は、常に残していきたい」と、加藤さんは考えるようになった。 だから、キャリアブレイクの期間を終えたとしても、フルタイムで働くことはなさそうだという。お金を稼ぐための仕事を週2.5日くらいで行い、残りの時間はやりたいことをするような働き方を今後も続けるかもしれない、と考えている。
そうした人生を実現するために、加藤さんは戦略的に動いている。キャリアブレイクのもうひとつのテーマとして、「自分の価値を提供できる分野を見出す」こと、言い換えれば「レッドオーシャンを避け、ブルーオーシャンを見つける」ことを意識し、行動してきたのだ。 「レッドオーシャンで戦うと、過当競争が起こり、そこで自分の価値を出すことが難しくなる。労力をかけずに自分の価値を出して稼ぐことができる分野を見つけることで、無理せず働いていきたいと思っているんです」
ブルーオーシャンを見つけるために、仕事や家族との時間のあいまに、今後のキャリアの「種まき」となる活動も行ってきた。例えば、興味がある分野の業務に単発で取り組んでみたり、イベントに足を運んだりしているらしい。 その結果、加藤さんは「地方の行政広報」という分野に可能性を見出しつつある。 「都庁を退職した後、全国各地の自治体の広報研修に関わる機会をいただいたことを通して、『地方では、広報の担い手が圧倒的に足りてない』と感じました。であれば、僕が役に立てることもあるんじゃないかな、と」
まだ明確に意思決定をしたわけではないが、地方の行政広報に関わりながら働く選択肢にどのようなものがあるか、加藤さんは考え始めている。 ■お金の不安も解消された しかし気になるのは、「今後もフルタイムで働かないとしたら、収入は大丈夫なのか」ということである。その点を加藤さんに尋ねると、「フルタイムで働かなくても、収入面でもキャリア面でもやっていけそうな手応えを感じている」のだという。 加藤さんもかつては、「なるべくたくさん稼いで、たくさん貯金をしなければ」と考えていた。しかし今振り返ればその不安は、将来の見通しが立っていなかったからこそ生まれたものだった。キャリアブレイクはいくつかの点で、その不安の解消に役立った。