今年注目される「暮らしを変える5つの技術」
昨年の日本の科学界を振り返ると、感情認識パーソナルロボット「Pepper」の一般発売や、国産旅客機「MRJ」の初の試験飛行に沸きました。そして2016年。今年はどのような技術が期待されているのでしょうか。日本科学未来館の科学コミュニケーター3人が注目の工学・情報技術を5つ厳選し、紹介します。
「超スマート社会」へ研究開発が進む技術
技術を選ぶにあたり着目したのは、「第5期科学技術基本計画」。2016年度~2020年度の5年間における科学技術政策の方針を定めるもので、この1月 にも閣議決定される見込みです。そのなかで、未来社会の姿の一つとして提唱しているのが「超スマート社会」です。 超スマート社会とは、簡単にいうと「必要なもの・サービスを、必要な人に必要なだけ届けられる社会」(※注1)のこと。電力を必要な量だけ供給したり、移動が困難なお年寄りでも十分なサービスを受けたりできる社会です。 この記事でご紹介するのは、そんな便利な社会の実現にぴったりな5つの技術。製品のかたちが見え始めたばかりのものから、これから事業の拡大が見込まれるものまで広く選んでみました。どんな技術であっても社会に普及するまでには「(1)研究開発」「(2)試作」「(3)実証試験・臨床研究」「(4)事業化・改善」という段階を経ます。注目の技術が今どの段階にあるのか確かめながら、一緒に未来の「超スマート社会」を想像してみませんか?
■ドローン
近年メディアによく登場するようになったドローンとは、遠隔操作、または自律飛行が可能な無人航空機を指します。元々は軍事用に開発されたものですが、小型化、低価格化が進み、ホビーとして楽しむ一般の人も増えてきました。 単に飛ばすだけでなく、その上で何らかの目的を遂行できるドローンは商用利用も真剣に検討されています。例えば、必要な時に、必要な人へすばやく物資を届ける手段としての利用。昨年、ドローンを活用した宅配サービスを千葉市の一部で実用化する計画が発表されたほか、香川県と兵庫県では離島や山間部に医薬品を届けるための実証実験が行われました。こうした利用が全国に広まれば、物流の仕組みは大きく変わることでしょう。 昨年4月、ドローンは首相官邸への落下事件などでも世間を騒がせました。これを受け、12月にはドローンの飛行ルールを定めた改正航空法が施行されましたが、このルールもまだ完全なものではありません。ドローンの商用利用のための実証実験はまだ始まったばかりです。この技術を安全かつ有効に使うために、最適な飛行ルールの見極めや、点検を義務づけるのか、事故があった場合にどうするのかなど、細々とした“お約束事”を決め、ドローンが飛び交う社会の実現に向けて動き始める一年となりそうです。(浜口)