香取秀真の鋳金世界紹介 長野県松本市美術館で12日から特別展
千葉県出身で長野県松本とゆかりの深い金工作家・香取秀真(1874~1954、本名・秀治郎)の代表作を集めた特別展が12日、松本市中央4の市美術館で始まる。溶かした金属を型に流して制作する鋳金作品を中心に106点を展示。高度な技術に裏打ちされ、東洋や日本の伝統を重んじながらも時代感覚を取り入れた作風を、松本に残る足跡とともに紹介する。12月1日まで。 香取は妻が現在の塩尻市宗賀出身だったため度々松本を訪れたという。正岡子規門下の歌人としても活躍し、松本の文人・池上喜作らと親交を深めて戦時中に約3年間、入山辺や里山辺に疎開した。交流は戦後も続き、寺院の釣り鐘を手掛けるなど松本と関わった。 作品は、香炉や花瓶、茶釜など日用品が中心で、学生時代から最晩年まで幅広くそろう。東洋の古典柄をベースにした繊細な文様のほか、獅子やミミズク、鹿といった表情豊かな動物のモチーフも多い。ハトをかたどった香炉は、翼などに施した中国古代の雷紋のアレンジと足部分のアールデコ調の直線的な造形の調和が目を引く。疎開時にしたためた書画なども並ぶ。 生誕150年・没後70年を記念した展覧会で、同館主催、市民タイムスなど共催。11日は関係者向け内覧会が開かれた。担当学芸員の稲村純子さん(46)は「日本の金工の巨匠と松本の縁を知ってもらい、細部までこだわった作品の形や文様をじっくり見てもらえれば」と話している。 19日午前10時から、美術館中庭で香取の釜を用いた茶席を設ける。使用済みを含む今展の観覧券持参者が対象で、参加無料。
株式会社市民タイムス