アギーレジャパンが初陣に見せた4-3-3の新チームスタイルの是非
また、後半20分過ぎには、岡崎慎司と本田圭佑の2トップにして4-4-2へとシステムを変更している。「リードされていたから、本田を守備に回す機会を少なくするための変更だった」とアギーレ監督は明かした。森重をアンカーにコンバートし、本田を2トップの一角でプレーさせたあたりに、「相手や状況次第で複数のシステムを使い分ける」と言われるアギーレ監督の真骨頂の一端が伺えた。 中盤の3人のメンバー構成にも、アギーレ監督の色がくっきりと浮かび上がっていた。3人のうちふたりが森重と細貝というように、守備にストロングポイントがある選手。もうひとりはアタッカーの田中順也で、プレーメーカーがひとりもいなかった。 振り返れば、92年に発足したオフト監督体制のラモス瑠偉に始まり、名波浩、中村俊輔、小野伸二、遠藤保仁と、これまでの日本代表は攻撃のリズムを作り、ゲームを組み立てるプレーメーカーを必ずひとりは起用してきた。だが、アギーレ監督はこの20年間、日本代表の“シンボル”だったプレーメーカーをひとりも起用しなかった。変わって増えたのが、ディフェンスラインからのロングボールとサイドからのクロスだ。前述したように森重がディフェンスラインに入ることで、吉田や坂井をサイドに開かせ、フリーになりやすくさせると、彼らから縦パスやロングボールが繰り出された。 吉田の縦パスはザックジャパンでもよく見られた形。だが、坂井のロングフィードはこれまでになかったものだ。ディフェンスラインの左サイドから対角線にロングフィードが放たれ、通れば即座にチャンスになりそうな場面もあった。同じようなことは、扇原にもできるだろう。そこに左利きのセンターバックが期待されている理由もあるはずだ。 ロングボールに関して「入れられるなら、どんどん入れていけ、という話だった」と坂井が言えば、アギーレ監督も「相手チームのプレッシャーが掛かっている状況で余計なプレーをしてはいけない。皆川が前にいるので、プレッシャーが掛かっている状況なら、そこに入れるようにした」と明かしている。もちろん、この日出番がなかった柴崎岳がインサイドハーフに入ったり、本田圭佑がインサイドハーフで起用されたりすれば、攻撃の構成力が上がり、単調なクロスが減り、ショートパスで崩す場面が増えるだろう。しかし、重要なのは、お披露目となる初陣で、そうした選手起用をしなかったことだ。この点に、アギーレ監督が何を大事にしようとしているのかのヒントが見え隠れする。