ANA・JALはポート準備…実現目前“空飛ぶクルマ”の現在地
ANA、都市利用視野/JAL、運航会社設立
全日本空輸(ANA)と日本航空(JAL)は、大阪万博での商業運航とその先の運航サービスを見据えて準備を進める。両社が使用するeVTOLは、業界をリードする海外企業が開発している。 ANAが採用する米ジョビー・アビエーションの「ジョビーS4」は静音性の高さが特徴で、5人乗り、航続距離160キロメートルの機体だ。アメリカ連邦航空局(FAA)の型式証明プロセスの5段階中3段階目の適合証明計画の内容についてFAAと合意し、4段階目を進めるところまで来た。3段階目の到達は米国初だ。25年の米国内商用サービス開始に向けて順調に進んでいる。 日本での商用運航には型式認証と商用運航の認可が必要となる。22年10月に国土交通省へ型式認証の申請を行い、商用運航の認可も検討している。 ANAは万博以外でもジョビーと連携し、関東や関西で半径100キロ―150キロメートル圏内の都市部のエアタクシーサービスの立ち上げを目指す。このほか、ポートの設置は、野村不動産やイオンモールと検討を進めている。 JALが万博での運航に向けて取り組む独ボロコプターの機体「ボロシティ」は、キャビンの上のリング状部材に複数のローターが配置された独特のデザインとなっている。2人乗りで航続距離は35キロメートルを予定する。 JALは、万博後の事業展開について決まったものはないとしつつ、「まずは遊覧・周遊体験や災害・救急救命対応などの検証を通じて社会受容性を高めていきたい」(同社)としている。 また、同社は住友商事と折半出資で空飛ぶクルマの運航会社「Soracle(ソラクル)」を設立した。両社は20年にエアモビリティー分野で業務提携を結んでおり、新会社を通じ協力関係をさらに強固にする。運航開始時期などは今後検討する。三菱地所や兼松とも、都内での空飛ぶクルマサービスの実現に向けた実証プロジェクトを進めている。 海外ではさらにユニークな取り組みもある。米サムソンスカイや米ASKAといった新興企業は自動車から飛行機に変身する本当の意味での“空飛ぶクルマ”の開発を進めている。挑戦は一層多様なものとなっている。