ジョナ・ヤノが語る、「ヘヴィ・ループ」の意味、フィッシュマンズから受けた衝撃
フィッシュマンズ「LONG SEASON」からの衝撃
―今作には実験的な感触もありますし、どんなプロセスで作ったのか気になります。前作『Portrait of a Dog』との大きな違いはありますか? 前作とはだいぶ異なっていますね。『Portrait of a Dog』はバッドバッドノットグッドと一緒に作った作品だから、サウンドとしてはすでにバッドバッドノットグッドというバンドとしての個性もあったし、もちろん、僕自身の個性もあった。だから、二組のアーティストが出会って作った音楽、という感じです。でも今回は、サウンドやビートをゼロから一緒に作っていった感じ。全体を通して、新たに発明した音楽というか。それが一番異なるポイントですね。 ―「The Heavy Loop」が30分間のインプロビゼーション楽曲、という点に圧倒されました。一体どのようにしてレコーディングしたのでしょうか。 例えば、アンビエント・ジャズやポスト・ロックにも長い分数の曲がありますよね。それが一番大きなインスピレーションでした。最初にレコーディングした「The Heavy Loop」は9分間のものだったんです。でも、僕が2023年に日本に来たときに、フィッシュマンズのライブを観て。彼らの作品に「LONG SEASON」という長い曲があるんですけど、実際にライブで35分にも及ぶ彼らの演奏を聴いた時に「何だこれは」と衝撃を受けてしまって。そこで閃いたのが、自分たちも30分間の曲を作らなきゃ、ということでした。あと、ニック・アーサーというヴィジュアル・アーティストにお願いしてアルバムのクリエイティヴ・ディレクションを任せんたんです。その時にスタジオで30分のMVを撮って欲しいと伝えて、約30分間、レコーディングの様子を撮ってもらったんです。その映像からさらにインスピレーションを受けて……というふうに進めていきました。 ―先日、アルバムのリリース前にYouTubeで24時間のライブ・パフォーマンスを中継している企画も拝見しました。メンバーたちが自由に動きながら演奏している様子は、まるでマジックを観ているようで。 僕とバンドメンバーは、アイデアが尽きることなく永遠に演奏していられるんです。ザ・ヘヴィ・ループというバンド名の由来はそういうところにもあって。一緒にいる限り、ずっとジャムを続けることができる。24時間演奏するというのは実際に長かったしハードだったけど、体力的には疲れても、みんなと共振して演奏する、ということ自体には疲れないんですよね。 ―企画の映像からは、ジョナさんがいかにインプロヴィゼーションを大事にしているかが伝わってきました。 すべての音楽は、インプロヴィゼーションから生まれていると思いますし、曲を書くことも、インプロビゼーションのスロウモーション版という感じがする。音楽のスタートはインプロヴィセーションだと思います。 ―今回のアルバムは様々な感情を呼び起こされるアルバムだとも思いました。このアルバムを作る際、よく聴いていたアルバムやアーティストはありますか? ジョン・コルトレーンの作品をよく聴いていました。彼の作品にも長い曲があるし、コルトレーンのキャリアそのものも興味深いんですよね。あとはチャーリー・パーカーも。バンドのメンバーは、みんなもともとジャズ・ミュージシャンなんですよ。だからジャズをよく聴いていましたね。あとはエイドリアン・レンカーやファイスト、ミカエル・レヴィたちの曲も。 ―アルバムには、フィーチャリング・アーティストとして「Snowtpath」にクレイロが参加しています。 数年前、彼女のツアーにオープニング・アクトとして参加したことがきっかけで仲が良くなったんです。それから、徐々に一緒にコラボレーションするようになって。ちょうどアルバムが出来上がったくらいのタイミングで、彼女がカナダの郊外にあるスタジオに来てくれたんです。ちょうど冬で、スタジオは山奥にあったから雪も降っていて。アルバム用の曲を作ろうなんてつもりもなかったんですけど、そうした状況の中でたまたま出来たというか。他に「No Petty Magic」に参加しているヘレナ・でランドとユーリもモントリオールに住んでいる素晴らしいアーティストで、僕の友人でもあるんです。彼らもとても自然な形でアルバムに参加してくれました。 ―アルバムが仕上がった、と感じた瞬間は? アルバムのために相当レコーディングしたし、ボツにした曲もいくつかあったんですけど、30分間の「The Heavy Loop」をレコーディングしたあと、「これで終わったぞ」という感覚があったんです。その後に楽曲を聴き直して「OK、これで見えてきた」、と。そして、最終的にこの8曲が並びました。 ―2025年1月には、ビルボートライブでの公演も控えています。ザ・ヘヴィ・ループのメンバーたちも一緒だと伺いました。 これまでの日本でのライブはどれも、僕一人でアコースティック形式で演奏するライブだったから、だいぶ違う雰囲気になると思う。もっとカラフルでダイナミックなパフォーマンスになると思うし、何より僕らは一緒に演奏することが大好きだから、その様子を楽しんでもらえたら。各メンバーのソロ・パートもしっかり聴かせられると思います。 ―気が早いかもしれませんが、アルバムを作り終えた今、すでに次作のことも考えている? はい。僕は“もしかしたら実現しないかもしれない未来のこと”について約束するのが嫌いだから、まだはっきりとは言えないけど……でも、次の作品についてはすでに確固たるアイデアがあるんです。だから、楽しみにしていてください。 <ライブ情報> Jonah Yano & The Heavy Loop LIVE IN JAPAN 2025 2025年1月6日(月)ビルボードライブ大阪(1日2回公演) 1stステージ 開場/開演:16:30/17:30 2ndステージ 開場/開演:19:30/20:30 BOXシート:18,900円(ペア販売) S指定席:8,900円 R指定席:7,800円 カジュアルシート:7,300円(1ドリンク付) 2025年1月8日(水)ビルボードライブ東京(1日2回公演) 1stステージ 開場/開演:16:30/17:30 2ndステージ 開場/開演:19:30/20:30 DXシートDuo:20,000円(ペア販売) Duoシート:18,900円(ペア販売) DXシートカウンター:10,000円 S指定席:8,900円 R指定席:7,800円 カジュアルシート:7,300円(1ドリンク付) ※料金は飲食代金別 ※チケットはビルボードライブ公式HPおよびプレイガイド(e+・ぴあ)にて発売中。
Shiho Watanabe