ジョナ・ヤノが語る、「ヘヴィ・ループ」の意味、フィッシュマンズから受けた衝撃
ヘヴィ・ループというのは、繰り返す出来事や感情の根底にあるもの
―どんなきっかけでプロのミュージシャンに? その時、暇を持て余していて。当時、住んでいた部屋にはルームメイトも何人かいて、部屋にはオルガンもあってギターもあったんです。最初はそれをただ弾いていただけだったけど、そのうちに「何だか面白いぞ」と思うようになって。それから、曲を書き始めたんです。徐々に「もっと曲を書きたい」とか「アーティストになりたい」と思うようになりました。 ―実際にプロのミュージシャンになってみて、いかがですか? そんなに違いはないかな。生活も特に変わらないし、今も新しいことに挑戦してみたり、常にインスピレーションを求めて活動したり、一人の人間としてもアーティストとしても成長しようとしている。ただ一つ違うことは、音楽だけにフォーカスできることですね。毎日、一日中ずっと音楽のことを考えているわけだから。 ―トロントではバッドバッドノットグッドなど、素晴らしいミュージシャンとの出会いがあったかと思います。ジョナさんは常にさまざまなアーティストとコラボレートしながら、ミュージシャンとして成長しているように見えます。 自分が尊敬するアーティストたちとコラボレートすることができて最高だと思っているし、そうしたミュージシャンとの出会いがあるからこそ、音楽って楽しいと思える。他の人の演奏や、その人がどんな考え方をしているのか、ということから色々と学んでいます。僕はまず、いろんな人が集まっているイベントやライブに行くんです。それがコラボレーションの最初のきっかけになる。他のアーティストと空間を共有することが大切で、そこで音楽のことを話しているといいヒントに繋がるんです。これまでのコラボレーションはどれも、僕の実際の暮らしの中に存在していた人たちとの関係性を反映したもの、という感じ。 ―最新アルバム『Jonah Yano & The Heavy Loop』に関して教えてください。このプロジェクトをスタートした大きなきっかけは何だったのでしょう? ここ4年くらい、自分でメンバーを集めてバンドを結成して活動しているのですが、彼らに影響された部分が大きいですね。メンバーと一緒に曲を書くようになって、そこから徐々にバンドとしてのサウンドをレコーディングする、ということにフォーカスしていって、アルバム作りに繋がる……というプロセスがありました。 ―今回のアルバム・タイトルそのものが『Jonah Yano & The Heavy Loop』ですよね。タイトルにバンド名も含まれている。 そうそう、バンドのことを今では”ザ・ヘヴィ・ループ”と呼んでいるんです。タイトルの意味ということで言うと、このアルバムは二つのパートで構成されていて、最初の7曲はジョナ・ヤノとしての楽曲。そこでは自分の人生について、自分が何を考え、感じているか、ということを表現しています。後半の「The Heavy Loop」は明らかに前者と違って、30分間も続くインプロヴィゼーションの曲なんです。だから、アルバムのタイトルはこの二つを並行的に、かつ二分法的に表すものにしたかった。 ―ジョナさんが思う”ヘヴィ・ループ”の意味を聞いてもいいですか。 もちろん。例えば、食事をした後にお腹が空いて、手を洗った後にまた汚れて、生があれば死がある、息を吸って、息を吐く……これらは全て、毎日の生活の中でループしていることなんです。ヘヴィ・ループというのは、こうした繰り返す出来事や感情の根底にあるもの、と考えています。僕たちは、こうしたサイクルに組み込まれるよう、あらかじめ定められていると感じる。あと、音楽的な意味だと、ヘヴィ・ループというのはバンド・メンバーに共通する音楽的なコネクションそのものも指しています。このフレーズは僕が考えた造語で、歌詞を思いつくようにして浮かんできた言葉なんですけど。 ―今、教えていただいたような“永遠に繰り返す”という思想は、ブッディズムの輪廻転生的な考えとも関連していると感じました。もしかしたら、そうした部分にもジョナさんのジャパニーズネスが反映されているのかもしれない。 もちろん。“抗えない人生の秩序”という意味では仏教とも共通した考えだと思います。ちなみに、アルバムのアートワークでは“ヘヴィ・ループ”を永劫回帰と訳していてーー翻訳してくれたのはモントリオールに住む友人のユキなんだけどーーこれはニーチェの思想から用いた言葉です。