「追加利上げ」「もしトラ」「ハリス現象」…いま個人の投資家はどう動くべきなのか? 専門家の見解は
当面は「夏枯れ相場」で調整局面!? 今年後半の相場展開は
今年前半は、為替市場で円安・ドル高の展開となり、株価が上昇した。日経平均株価は2月に34年ぶりの史上最高値を更新し、3月に4万円台に乗せ、直近の7月11日には4万2000円台にまで上昇した。 『S&P500』『オルカン』絶好調は「円安」のおかげ…「円高」になったらどのくらい下がるのか? 米国では今年11月に大統領選があり、誰が選ばれるのかは経済など世界情勢に大きく影響する。金融市場はその動向をにらみながら、一喜一憂の展開となりそう。今年後半の相場展開を専門家に聞いた。 今年後半の株式市場について、楽天証券経済研究所の香川睦チーフグローバルストラテジストは次のようにみている。 「8、9月にかけて日本株は『夏枯れ相場』となって、もみ合いとなり、何かショックが起これば下落もあり得ます。過去30年の米国株の動きを見ると、米大統領選が終わればアクが抜けて年末高となっており、日本株も同じようになるのではないでしょうか」 マネックス証券の広木隆チーフ・ストラテジストも、日本株について 「当面は夏枯れ、夏休みとなるでしょう。日経平均株価が先日、4万2000円台をつけたのは『スピード違反』です。しばらくは調整局面になるかもしれません」 と話す。年末に向けては、米大統領選の不透明感がなくなり、日本株が「持ち直してくる」とみている。 いずれの専門家も、日本株は当面、「夏枯れ相場」で調整局面となるが、米大統領選の大勢が判明後は年末に向けて持ち直すと予想する。それまで、株式市場は米大統領選の動向などに影響を受けやすく、不透明感が強くて相場の上下変動(ボラティリティ)が大きくなるともみている。 ◆米大統領選の動向…日経平均は年末4・5万円も 日経平均株価は年末に向け、どれぐらいまで上昇するのだろうか。香川さんは、上値が4万3000円前後、当面の下値が3万8000円くらいという。広木さんは、上値が4万5000円程度、当面の下値は3万7000円くらいまで下落することもあるとみている。 金融相場の動向に大きな影響を与える米大統領選を、どうみればいいのだろうか。バイデン大統領が再選を目指していたが、高齢で健康面に不安が広がり、大統領選から撤退を決めた。後継の民主党候補はカマラ・ハリス副大統領となるのが確実視されており、共和党候補のトランプ前大統領との闘いになるとみられている。 当初は米大統領選で、もしかするとトランプ前大統領が当選するとの「もしトラ」のシナリオがあった。現地の世論調査でトランプ前大統領の有利が伝えられると、シナリオは「ほぼトラ」に変わってきた。しかし、民主党の候補者が交代することで、そのシナリオに不透明感が出てきている。 ◆日本の自民党総裁選も不透明で、日本株は「秋に入るまで弱い」展開か トランプ前大統領は「米国第一主義」を掲げ、保護貿易の高関税や、国際協調よりも自国優先の姿勢を打ち出し、金融市場には警戒感もある。米大統領選について、香川さんは「まだ決め打ちできません」と言いつつ、 「トランプさんが前回、大統領に就任したときに、ソーシャルメディアで何かつぶやくたびに株式市場は影響を被りました」 と話す。米大統領選の動向に不透明感があり、「相場の上値を抑える」ともみている。 広木さんは、日本の自民党総裁選も不透明と指摘する。岸田文雄首相が不人気のなかで再選を目指すのか、再選を断念して別の候補者が出てくるのか、それによっては日本の舵取りも変わる。日米ともトップ選びが不透明で、広木さんは日本株が「秋に入るまで弱い」展開となる可能性があるとみている。 ここで、今年前半の日本株上昇を振り返ってみよう。三井住友DSアセットマネジメントの市川雅浩チーフマーケットストラテジストは、株価上昇の要因について「日本独自の好材料が大きい」とみている。 一つ目は、東京証券取引所が昨年春に資本コストや株価を意識した経営の実現を提唱したこと。上場企業に対して資本効率や情報開示の改善などを求め、海外投資家を中心に評価されて、日本株がグローバル投資の対象になったと、市川さんは言う。 二つ目は、企業が大幅な賃上げを実施し、経済の好循環へ期待が出てきたこと。三つ目は、企業業績の見通しが良くなったこと。業績は企業の改革のほか、円安も輸出企業を中心に追い風になった。